「SIerから転職するのは難しいのかな?」
「具体的なキャリアパスには、何があるんだろう?」
「SIerから転職する時の注意点や必要なものを知りたい!」
と思うことはありませんか?
SIerから転職するとき、開発方法の違いなどでギャップを感じてしまうことはあります。しかし自分の思い描いたキャリアを目指すうえで、転職が必要となることも。
そこで今回は、
• SIerを辞めて、転職するのは難しい?難易度は?
• SIerからの転職するキャリアパスのパターン6選
• SIerから転職する際に気を付けるべきこと
• SIerからの転職時に用意すべきおすすめポートフォリオ
• SIerからの転職についてよくある質問
の流れで、SIerから転職を考える人におすすめの情報をまとめてお伝えします。
記事の後半で「SIerから転職するリミット」や「SIerから転職すると年収が上がる?」といった疑問にもお答えしているので、ぜひ最後までお読みください。
1. SIerを辞めて、転職するのは難しい?難易度
SIerを辞めて転職する難易度について、解説します。
1.1 SIerからの転職難易度
SIerからの転職難易度について、以下2つに分けて見ていきましょう。
- 給与・労働条件等にこだわりがなければ「普通」
- 自社サービス運営企業へのエンジニア転職の難易度はやや高め
1.1.1 給与・労働条件等にこだわりがなければ「普通」
転職の難易度を確認するために、求人サイトdodaがまとめた求人倍率のデータを見てみましょう。
技術系(IT・通信)の有効求人倍率を見てみると、他業種と比べても求人倍率が高いことがわかります。つまり応募者よりも求人数の方が多い状態なので、給与や労働条件を厳しく絞りすぎなければ、転職しやすい業種です。
では、どういった企業の難易度難易度が高いのでしょうか。
1.1.2 自社サービス運営企業へのエンジニア転職の難易度はやや高め
与信管理サービスを提供しているリスクモンスター株式会社の業界レポート(情報サービス業)によると、以下のように情報がまとめられています。
情報サービス業は、IT 業界のうち、「ソフトウェア業」と「情報処理・提供サービス業」の2つを含み、市場規模は約17兆円である。
クラウド技術やビッグデータ分析の活用ニーズの高まりに加え、ドローン、人工知能、IoT などの新技術を活用したビジネス展開や FinTech など他産業と IT を融合したサービスの増加により、情報サービス業の市場は拡大を続けている。
(中略)
一方で、クラウドサービスの市場拡大に伴い、サーバーやソフトウェアの一括販売モデルは縮小していくとみられ、「受託開発ソフトウェア業」や「パッケージソフトウェア業」の市場が伸び悩むなど、情報サービス業全体の市場としては拡大傾向にあるものの、技術動向による業界ごとの好不況の差がうかがえる。
出典:情報サービス業|リスクモンスター株式会社
つまり、
• SIerの上流工程を頂点としたピラミッド構造の影響力が強い
• 情報サービス業が市場規模の大きな割合を占めている
• 自社サービスを手掛ける企業は、IT業界全体から見るとごくごく一部
といったことがわかります。
このことから、自社サービスは業界で見てもごく一部しかないため、転職の難易度が上がってしまう可能性はあるでしょう。
1.2 SEがSIerから転職を希望するケースが多い理由
SEがSIerから転職を希望するケースが多い4つの理由について解説します。
1.2.1 コスト削減が恒常化しやすい構造的問題
日本最大の電子掲示板「2ちゃんねる(現5ちゃんねる)」の設立者であるひろゆき氏は、次のようにSIerについて語っています。
はっきり言って、SIerで働いているエンジニアは今すぐ逃げた方がいい。
他社にものを納品するビジネスモデルの会社は、同じような企業がたくさんある中での競争になるから、その競争に勝つためにはどうしたってコストを削減せざるを得ない。コストを削減すれば、当然給料も安くなる。それをしなければ競争に負けて潰れるだけ。
出典:SIerって本当にヤバいの? ひろゆきが語る、業界ごと沈まないためのキャリア戦略|エンジニアtype
SIerは差別化のポイントが「コスト」に集中しやすい構造になっており、その結果コーダーが疲弊しやすいのが問題となっているようです。
1.2.2 開発の担当範囲が狭い
SIerはウォーターフォール開発のため、作業範囲が工程ごとに分担されています。その結果、下流のコーダーは上流の設計に参加せず、上流のエンジニアは実際のコーディングに参加しないといったピラミッド構造になっています。
「作業を分担して開発効率を上げる」といった点では良いかもしれませんが、実担当者にとっては「開発の担当範囲が狭い」ことで携われる業務が少なく、スキルの幅を広げにくいデメリットも。
ウォーターフォール開発とアジャイル開発の違いについては、以下をご一読ください。
1.2.3 最新の技術を取り入れづらい
上述したように、SIerはウォーターフォール開発が主流となっています。
ウォーターフォール開発でミスが発生してしまうと、上流工程までさかのぼって修正が必要となり、手戻り工数が大きくなってしまうことも。またSIerは、官公庁や大企業の堅牢なセキュリティが求められる案件を扱うことも多いです。
そのため、
- コーディングのセキュアさ
- セキュリティのレベルさ
を重視される傾向にあり、セキュリティリスクが心配となる最新技術は取り入れづらいのが実情です。
最新のスキルを実務で学べない点も、転職を希望する理由の1つと言えます。
1.2.4 コーディングを担当しないことが増える
SIerは、ウォーターフォール開発が主流かつ開発規模が大きいケースが多いです。そのため上流工程を担当するようになるほど、担当業務が要件定義やドキュメント作成に特化したものになってしまいます。
コーディングは下請けに外注なども多くなるため、プログラミングスキルや技術を極めたい人が不満を感じやすい点でしょう。
では、どういった SIerからのキャリアパスがあるのでしょうか。
2. 【SIerからの転職】キャリアパスのパターン6選
SIerから転職するキャリアパスのパターンを、6つご紹介します。
2.1 大手SIerから中小SIerへの転職
中小SIerは仕事がクライアントからの直請けではなく、下請け・請負となることが多いために、大手SIerと求めれるスキルや経験は大きく異なります。
大手SIerで長年働いてきた40代以上の非管理職の方に多く、管理職になり現場から離れるのが嫌で転職するパターン、管理職としての評価が著しくなくリストラ対象となってしまい転職するパターンなどがあります。この場合、年収が下がるのは避けられないと考えるべきです。また、中小SIerで求められるのは、現場で活躍できる人です。よって、要件定義や管理(≠プロジェクトマネジメント)のみしか出来ない人だと転職は非常に困難になります。理想は、業務知識、要件定義、設計、開発(尚可)、テスト、品質管理、プロジェクトマネジメントまでのスキル・知識を保有しているプレイングマネージャタイプです。
2.2 中小SIerから大手SIerへの転職
「中小」の規模によりますが、ある程度名前が知られている中堅規模のSIer、または特定の領域に特化した中小SIerに所属している20代であれば、大手SIerへの転職も不可能ではありません。大手SIerはクライアントからの直請けとなることが多い為、プロジェクトのマネジメントや要件定義段階から携われる可能性があり、働き方を大きく変えるチャンスとなります。
一方で、コーディングそのものは下請けに任せるケースがより多くなるでしょう。そのため要件定義やドキュメント作成などが、主要業務になりやすいです。
2.3 SIerからWeb系企業への転職
SIerと異なり、Web系企業は「アジャイル開発」が主流となっている企業も多いです。そのため開発手法の違いに、最初は戸惑ってしまうこともあるでしょう。しかし、実際のスタートアップ企業にはSIer出身者も少なくありません。問題は「どこにいたか」ではなく「何ができる」といことでしょう。最新技術を常に追い続け、環境に柔軟に適応できる人であれば、Web系企業への転職も十分に可能です。
• さまざまな技術を使って、スピード感のある開発がしたい
• 自社サービスの開発がしたい
と思っている人におすすめのキャリアです。
SIerとWeb系それぞれの違いについて詳しく知りたい方は、以下をご一読ください。
2.4 SIerからコンサルティングファームへの転職
ITコンサルティングと言っても、実際の業務は様々です。SAPやSalesforceなどのERPやCRPのコンサルティングをするパターンもあれば、金融、医療、物流など特定に領域に対してのコンサルティングをするパターン、また、コンサルティングと言っても業務の実際はSIerとあまり変わらないというパターもあります。 大手SIerとの違いで言えば、よりシステム導入支援を通じた経営課題の解決にコミットできる点でしょう。ここにやりがいを感じられるのであれば、ITコンサルタントを目指すのもおすすめです。
2.5 SIerからSESへの転職
SESは、他社プロジェクトに自社の社員を派遣する「人材派遣」に近い業態。企業に常駐し、開発~保守・運用までをプロジェクト毎に携わります。
SIerからSESへ転職する理由の大半は、「大手SIerから中小SIerへの転職」と同じであり、大手SIerで長年働いてきた40代以上の非管理職の方が仕方なく転職するパターンが多いでしょう。
2.6 SIerから非IT企業の情報システム部への転職
SIerで培った要件定義や基本設計などの上流工程のスキルは、非IT企業における情報システム部として活かすことができます。SIerでは、自身がコーディングをすることは少なく実作業は下請けで発注することが多い為、この経験は、情報システム部におけるベンダーコントロール業務にも活かせるはずです。
3. SIerから転職する際に気を付けるべきこと
SIerから転職する際に気をつけるべき点は、次の3つです。
- 開発スタイルの違い
- キャリアパス
- SIerのメリット・良いところも認識しておく
3.1 開発スタイルの違い
SIerはウォーターフォール開発が主流となっているため、アジャイル開発を主流とするWeb系などに転職するとギャップを感じてしまうことも。具体的に言うと、要件定義書や基本設計書などを用意しないケースもあります。
ユーザーストーリーとリリース計画を立てて、イテレーション(≒スプリント)を回しながらベロシティを計測する流れとなるのですが、経験がないと何が何やらわかりませんよね。さらに技術を求めるプロジェクトもあり、ドキュメントの質やセキュアさを重視していたウォーターフォール開発と比べてやりづらいと感じることもあるでしょう。
開発スタイルの違いについて事前に調べておきたい方は、以下をご一読ください。
3.2 キャリアパス
先ほどお伝えキャリアパスだけ見ても、6通りあります。自分にとって何が最適か、事前にメリット・デメリットなどを分析してから転職を考えるのがおすすめです。
特に、
- Web系企業
- コンサルティングファーム
- SES
- 異業種
などを目指す場合は、働き方が大きく変わることもあるので、入念にチェックしておきましょう。
3.3 SIerのメリット・良いところも認識しておく
転職することを前提にキャリアパスを考えてしまうと、「転職してみたけど、SIerの方が働きやすかった...」と思うことも。そのため、SIerのメリットもあらためて調べておくと良いかもしれません。
特に、以下のような場合は、SIerに向いている可能性もあります。
• ゴールが決まっているプロジェクトに携わりたい人
• 技術を極めるよりも、業務知識やマネジメント職を目指したい人
• 大企業や官公庁の大規模案件に携わりたい人
SIerのメリットも認識したうえで、「SIerから転職しない」という選択肢も考えておくと良いでしょう。
4. SIerからの転職時に用意すべきおすすめポートフォリオ
SIerからの転職時に用意すべきポートフォリオは、次の3つです。
- 手掛けたWebサービス・Webアプリケーションの一覧
- 自らの名義で発表しているQiitaやnote、個人ブログの記事
- スキルシート
4.1 手掛けたWebサービス・Webアプリケーションの一覧
実績として手っ取り早く用意できるのが、手掛けたサービスやアプリのURL一覧です。ただしSIerの場合は、クローズド(公開できない)で運用されているシステムなどを担当しているケースもあるでしょう。
もしも公開できない情報があるなら、開発で担当した箇所をまとめておくと良いかもしれません。
一般に公開されているアプリやサービスであれば、職務経歴書やスキルシートの補足として利用できます。また個人開発したアプリなども記載できるので、コードを公開しても問題なければGitHubを提出すると良いでしょう。
4.2 自らの名義で発表しているQiitaやnote、個人ブログの記事
最近では、技術ブログとして「Qiita」や「note」で情報発信をしている方もいるでしょう。もしもこういったブログサービスなどを利用している場合は、職務経歴書の補足などに載せるのも1つの手です。
企業側視点で見ると、技術レベルや学習意欲を判断する材料になります。
4.3 スキルシート
スキルシートとは、経験やスキルをまとめた資料のこと。
これまでの実務経験だけでなく、自己PRの記載も必要です。参考情報が知りたい方は、以下をご一読ください。
5. SIerからの転職についてよくある質問
SIerからの転職についてよくある質問を4つご紹介します。
5.1 SIerからの転職のリミットは何歳が目安?
結論から言うと、SIerからの転職のリミットは「どの職種に転職するか」によります。SIerから未経験の異業種に転職する場合は、20代後半~30代半ばがリミットとされやすく、かつ転職直後は年収が下がるケースが多いでしょう。
中小SIerから大手SIerへの転職など、同業種の場合は年齢よりも本人のスキルが重視されやすいです。ただし30代半ば以上の場合は、プログラミングスキルよりも「マネジメント経験や実績」が重視されやすくなる点に注意が必要です。
5.2 SIerに勤務しながら副業として別の案件を行うのはあり?
結論から言うと、ありです。むしろ今後価値の高いエンジニアを目指すうえでは、副業などで新たなスキルを身につけるのがおすすめです。
副業案件の探し方や注意点については、以下で詳しく解説しています。ぜひ参考にしてみてくださいね!
5.3 SIerが「やばい」と言われる理由は何?
SIerが「やばい」と言われる理由は、以下の2つ。
- 若手エンジニアにとって成長が止まりやすい環境
- ドキュメント作成力がコアスキルになってしまう
SIerは担当業務が分かれており、業務範囲が限定されます。またウォーターフォール開発の都合上、新たな技術を取り入れづらいでしょう。
その結果、一気通貫した開発の流れやスキルを身につけづらいことも。またドキュメント作成がメインとなってしまうため、技術力が上がらない心配も。
さらに下請けはコスト削減が恒常化しており、海外アウトソーシングも進んでいます。将来的に海外アウトソーシングがより進み、仕事がなくなることを心配している方がいるようです。
仕事がなくならないか心配な方は、以下をご一読ください。
5.4 SIerから転職すると年収が上がる?
結論から言うと、転職する業種や経験によって年収は大きく変わります。
具体的に言うと、
• 未経験・異業種への転職の場合
→年収が下がる可能性が高い
• 同業種の場合
→本人のスキルが高ければ上がりやすい
といった違いがあります。
もしも年収を上げることだけが転職の目的なら、転職せずに副業を始めるのも1つの手です。副業については、以下が参考になります!
6. まとめ
今回は、
• SIerを辞めて、転職するのは難しい?難易度は?
• SIerからの転職するキャリアパスのパターン6選
• SIerから転職する際に気を付けるべきこと
• SIerからの転職時に用意すべきおすすめポートフォリオ
• SIerからの転職についてよくある質問
などについて解説しました。
闇雲に転職を考えるのではなく、キャリアパスを思い描いたうえで転職すべきか決めることも重要です。今回は6つのキャリアパスをご紹介していますが、他にも目指したいエンジニア像が見つかるかもしれません。
• フロントエンドエンジニア
• サーバーサイドエンジニア
• インフラエンジニア
• AIエンジニア
など、エンジニアの種類で言ってもいろいろあるので、ぜひ自分を見つめなおして将来のキャリアパスを考えてみてくださいね!