独立系SIerとは、どんな企業でしょうか?独立系に分類する定義や、メーカー系・ユーザー系との違いを解説します。さらに独立系SIerで活躍するために必要なスキルや、ホワイトかどうか、また、やめとけと言われることもある理由まで、メリットとデメリットを交えてご紹介します。
1. 独立系SIerとは?
独立系SIerとは、どのような企業を指すのでしょうか。その定義や代表的な企業、事業範囲、メーカー系・ユーザー系SIerとの違いをご紹介します。
1.1 独立系SIerの定義
独立系SIerの定義は、「特定の親会社が存在しないSIer」です。詳しく解説していきましょう。
■ 特定の親会社が存在しないSIer
独立系SIerは、親会社を持っていません。ユーザー系SIerやメーカー系SIerは、親会社の情報システム部門がSIerとして独立したケースが多いことが特徴。よって親会社との取引が、自社のビジネスの中核を占めます。
一方、独立系SIerは、システムインテグレーション事業を主目的に設立された企業群です。メーカーやベンダーにとらわれず、クライアントの要望に最適なハードウェアやソフトウェアを提供することができるという強みがあります。
■ 代表的な企業
独立系SIerの代表的な企業には、大塚商会、日本ユニシス、トランスコスモス、ITホールディングスなどが挙げられます。
1.2 独立系SIerの事業範囲
独立系SIerは、基本的に「営業」「要件定義」「設計」「開発」「テスト」「運用・保守」の流れで事業を行います。
■ 営業
独立系SIerは親会社とのつながりに依存せず、独自に営業を行い、案件を獲得する必要があります。顧客と直接契約を結び1次請けとなるケースもあれば、1次請けの企業から業務を受託する2次請けとなるケースもあります。
■ 要件定義
顧客の求めるシステムについて詳しくヒアリングし、必要なハードウェアの性能やソフトウェアの機能を決定します。その内容を元に、業務処理の流れなどを記載した要件定義書を作成します。チームリーダークラスの経験豊富なSEが行うことの多いフェーズです。
■ 設計
要件定義で決定した内容を元に、細かな仕様を設計します。主な担当者はSEです。まず基本設計で画面の数やデータベースに保存すべき値を設計します。次に詳細設計で、細かな画面の動作や内部処理に必要な計算方法などを設計します。
■ 開発
現場で決められたコーディング規約と設計書の内容に沿って、プログラマーがコーディングを行います。
■ テスト
プログラムのエラー(バグ)を探し、修正する工程です。テストには1つの機能単位で行う単体テスト、連動する機能を組み合わせて行う結合テスト、全機能が揃って行う総合テストなどの種類があります。テストはプログラマーやSEが行うほか、テスト専門のエンジニアが行う場合もあります。
■ 運用・保守
稼働後のシステムのメンテナンスやチューニングを行うフェーズです。問題が発生した場合には、速やかに対応を行います。設計したSEが行うほか、保守専門のエンジニアが行う場合もあります。
SIerの事業について、さらに詳しく知りたい方は次の記事もご参照ください。
1.3 メーカー系・ユーザー系SIerとの違い
メーカー系SIerと独立系SIerとの違い、またユーザー系SIerと独立系SIerとの違いについて、それぞれ詳しく解説します。
■ メーカー系SIerと独立系SIerの違い
メーカー系SIerとは元々、コンピューターのハードウェアを作っていた企業(メーカー)の情報システム部門が独立したもの。手がける案件は親企業から受託したものがメイン。なおかつ、親会社の製品をできるだけ活用したソリューションの提案が特徴です。
対する独立系SIerには親会社が存在しないため、同系列の企業から優先して案件を受注できるなどの利点はありません。その反面、親会社の製品を使わなければならないなどの制約もなく、柔軟なソリューションの提案が可能です。
■ ユーザー系SIerと独立系SIerの違い
ユーザー系SIerとは、銀行・生保・損保などのユーザー系企業の情報システム部門が独立したものを指します。そもそもが親会社向けのサービスを提供するために設立されたSIerであるため、特定の業務への理解が深く、それを活かしたソリューションの提案が強みです。
2. 独立系SIerで活躍するために必要なスキル
独立系SIerに入社した場合、活躍するために必要なスキルをご紹介します。
2.1 プロジェクトマネジメント
QCD(品質、コスト、納期)を満たすシステムを作り上げるためには、プロジェクトマネジメント能力が重要です。
SIerのプロジェクトを順調に進めて行くためには、自社の社員だけでなく、下請けのITベンダー企業やクライアント企業との関係を適切にマネジメントし、想定外の事態を引き起こさないように進めて行く必要があります。
特に大規模プロジェクトによく見られる「ウォーターフォール型開発」であれば、後から手戻りが発生しないように、プロジェクト開始時点で要件定義を最適に行えるかどうかが重要。また部分的にアジャイル開発を取り入れる場合は、どのような形で取り入れるか、正確な要件定義や見積りのスキルも問われます。
2.2 プログラミングスキル
SIerに就職した場合、キャリアパスがマネジメント寄りになります。入社後にプログラミングスキルを磨く場面はあまりなく、機能の設計や作業の見積りなどが業務の中心になりがちです。しかしプログラミングについて全く知らないでいると、まずその機能を実装することが技術的に可能なのかが見積もりできません。
マネジメント寄りのキャリアを積むとしても、一定のプログラミングスキルは必須です。
2.3 ドキュメント作成
SIerで仕事を続けていると、関わるフェーズはより上流の工程になっていきます。
すると設計や要件定義といったフェーズに関わることが増え、ドキュメントの作成がメインの業務となります。大企業や官公庁案件の巨大プロジェクトになればなるほど、関わるエンジニアの数も開発工数も莫大なものになります。だからこそ要件を正確にまとめたドキュメントの重要性は高いです。
2.4 コミュニケーション能力
独立系SIerには親会社がないため、自身でクライアント企業に営業し、案件を獲得する必要があります。そのためにはコミュニケーション能力が必須です。
3.【独立系SIerはやめとけ?】メリット・デメリット
「独立系SIerはやめとけ」と言われることがあるのは、なぜでしょうか。メリットとデメリットの両面からご紹介します。
3.1 メリット
独立系SIerの最大のメリットは、メーカー系SIerのように使用するハードウェアやソフトウェアの制限を受けるということがない点。製造メーカーを問わず要件に最適な製品を使って、システムを構築することが可能です。
3.2 デメリット
デメリットは、非常に高い営業努力が必要という点です。メーカー系SIer等はコンスタントに親会社から仕事を回してもらえるのに対し、独立系SIerは常に自力で案件を獲得せねばなりません。結果として大手SIerの二次請け・三次請けの立場となり、ウォーターフォール開発の下流を担当する場合もあります。
4. 独立系SIerの給与の目安
独立系SIerの給与は、いくらくらいなのでしょうか。独立系の有名企業である「大塚商会」「トランスコスモス」、および「ITホールディングス」の年収をご紹介します。
※業界平均年収:694万円
平均年収 | 業界平均年収※との差 | |
---|---|---|
大塚商会 | 821万円 | +127万円 |
トランスコスモス | 459万円※ | -235万円 |
ITホールディングス | 777万円 | +83万円 |
※トランスコスモスの平均年収には、ITエンジニア以外の職種も含みます
5. 独立系SIerに入社するには?
いきなりエンジニアとして上流工程を担当することは現実的に難しいため、まずはプログラマーからスタートする現場が大半です。
さらにIT業界未経験からのスタートの場合、次のような「プログラマーに向いていると考えられる人の特性」を自身が持っているかを検討してみることがおすすめです。
• コミュニケーションが好き
• 好奇心旺盛
• PCが好き(1日中PCに向かっていても苦にならない)
• こつこつと作業ができる
プログラミング自体が未経験、なおかつ新卒でもない場合は、まず簡単なものでもいいのでアプリを1つ作ってみるのもおすすめです。
5.1 独立系SIerからステップアップするには?
自分が本当に身につけたいスキルは、マネジメントなのか、プログラミングなのか、今一度整理してみましょう。
エンジニアとして開発技術を極めていきたいという方にとって、コーディングの機会が少なく新しい技術の積極的な導入が難しいSIerは、つまらないと感じる方も多く存在するようです。その場合は、自社開発企業への就職なども視野に入れてみてはいかがでしょうか。
6. まとめ
今回は独立系SIerについて、どんな企業なのか、独立系に分類される企業の定義、メーカー系・ユーザー系との違いを解説しました。独立系SIerは受託開発を行うSIerの安定性だけでなく、自社開発も行う独自性を兼ね備えているSIerです。本記事が、独立系SIerへ興味を持つきっかけとなりましたら幸いです。