関連記事:ネットワークスペシャリスト試験は転職に有利?気になる年収も調査しましたでは、ネットワークスペシャリスト試験の概要から資格の価値、そして年収などをご紹介いたしました。今回は、試験の難易度や一般的に必要とされる勉強時間をご紹介したいと思います。
1. ネットワークスペシャリスト試験の合格点と合格率
1.1 ネットワークスペシャリスト試験の合格点
午前Ⅰ/午前Ⅱ/午後Ⅰ/午後Ⅱと4つの試験がありますが、全ての試験で100点満点中60点以上取得できれば合格となります。
合格点は低く完璧は求められていない形ですが、代わりにかなり難度の高い問題が出題される傾向にあります。
1.2 ネットワークスペシャリスト試験の合格率
現行の試験制度が始まった平成21年度以降の推移を表にまとめました。
IPA公式から発表されている合格率も10%台半ばと既にかなり低い数字ですが、これは受験者数に対する合格者数の比率です。しかし実際には、応募者数に対する受験者数の比率は65%程度となっています。
受験率が低い理由は仕事の都合で行けなくなったなど様々あると思いますが、勉強が間に合わなかった方が多いと仮定すると、実際の合格率は応募者数から計算した方が状況が分かるのではないでしょうか。
応募者数に対する合格者数から算出した合格率は、次表のようになります。
年度 | 応募者数 | 受験者数 | 合格者数 | 合格率 (受験者比) |
合格率 (応募者比) |
---|---|---|---|---|---|
平成21年秋期 | 25,161人 | 16,368人 | 2,433人 | 14.9% | 9.7% |
平成22年秋期 | 25,544人 | 16,649人 | 2,263人 | 13.6% | 8.9% |
平成23年秋期 | 21,465人 | 14,077人 | 2,069人 | 14.7% | 9.6% |
平成24年秋期 | 21,941人 | 14,612人 | 2,019人 | 13.8% | 9.2% |
平成25年秋期 | 20,803人 | 13,288人 | 1,899人 | 14.3% | 9.1% |
平成26年秋期 | 20,220人 | 13,215人 | 1,832人 | 13.9% | 9.1% |
平成27年秋期 | 18,990人 | 12,407人 | 1,811人 | 14.6% | 9.5% |
平成28年秋期 | 18,096人 | 11,946人 | 1,840人 | 15.4% | 10.2% |
平成29年秋期 | 19,556人 | 12,780人 | 1,736人 | 13.6% | 8.9% |
平成30年秋期 | 18,922人 | 12,322人 | 1,893人 | 15.4% | 10.0% |
令和元年秋期 | 18,342人 | 11,882人 | 1,707人 | 14.4% | 9.3% |
令和2年度 | 中止 | ||||
令和3年春期 | 12,690人 | 8,420人 | 1,077人 | 12.8% | 8.5% |
令和4年春期 | 13,832人 | 9,495人 | 1,649人 | 17.4% | 11.9% |
令和5年春期 | 15,239人 | 10,395人 | 1,482人 | 14.3% | 9.7% |
令和6年春期 | 16,085人 | 11,089人 | 1,704人 | 15.4% | 10.6% |
令和2年度の試験は、新型コロナウイルスの流行により中止となりました。令和3年度の受験者数が大幅に減少していることも、それが原因と考えられます。
またこれまで秋期試験で実施されていましたが、令和3年度から春期試験へ変更になっていますので、受験の予定を立てる際にはご注意ください。
1.3 ネットワークスペシャリスト試験の受験の目安
大規模ネットワークの構築や運用について、3年以上の経験があるネットワークエンジニアやシステムエンジニアの方におすすめです。
2. ネットワークスペシャリスト試験の難易度
2.1 試験の難易度が「高」である理由
ネットワークスペシャリスト試験(NW)は、情報処理技術者試験のうちでも最高難度「レベル4」である高度区分試験のうち1つです。
経済産業省が認定するITスキル標準(ITSS)でも、データベーススペシャリスト試験はレベル4に設定されています。その他の情報技術者試験やネットワークに関連する試験の難易度は、次のようなレベル区分になっています。
難易度 | 試験区分 |
---|---|
レベル1 | ITパスポート試験、LinuC-1、LPIC-1 |
レベル2 | 基本情報技術者試験、CCNA、LinuC-2、LPIC-2 |
レベル3 | 応用情報技術者試験、CCNP、LinuC-3、LPIC-3 |
レベル4 | 9種類の高度試験(ネットワークスペシャリスト試験、情報処理安全確保支援士試験など)、CCIE |
レベル4に合格すると、高度IT人材としてのスキルを有していると評価されます。レベル4に該当する他のIT関連資格には、同じ情報処理技術者の8つの高度試験のほか、「CCIE」が挙げられています。
さらに前出の表のように合格率は10%程度であり、その他職種向けの国家試験群と比べてもかなり低い水準であるということが分かります。特にNWを受験する層は経験を積んだエンジニアが主体となっているにも関わらず合格率が低いことから、難度の高さがうかがえます。
2.2 論述に慣れていない場合は特に難しい
現場で腕の良いエンジニアであっても、NW受験でつまづきやすいところがあります。それは、「短文(15字~40字程度)で的確に意図を伝えられる文章力」です。
プロジェクトマネージャ試験ほどは論述に左右されませんが、侮っていると不合格の無限ループに陥る可能性があり、日常的に文章を書く機会があまりないという方には注意が必要です。
また午後試験については、問題文が10ページを超える長文です。そのため読解にも注意が必要です。
長文問題の攻略のコツとして、次の順序で読むことがおすすめです。
(1)問題文を飛ばし、先に設問を読む
(2)設問の答えを探しながら、問題文に戻って読む
特に長文読解で時間が足らなくなる方は、ぜひ実践してみてください。
2.3 CCIE(シスコ技術者認定資格)との難易度比較
シスコ技術者認定試験は、シスコ社製品を扱うスキルを証明するための試験です。ルーターやスイッチといったネットワーク機器の設計や管理、操作方法など、シスコ社製品の取り扱いに特化した知識が問われます。
それに対してネットワークスペシャリスト試験では、ネットワークの設計や構築、トラブル対応など、特定の製品に依存しない一般的なネットワークの知識が問われます。
そのため業務でシスコ社製品を扱う機会があるか否かによって、難易度は大きく変わります。特にCCIEは実技試験があり、机上の勉強だけでは合格できません。
「あまりシスコ社製品を扱う機会はないけど高度なネットワークの勉強がしたい」という方には、ネットワークスペシャリスト試験の方がおすすめです。
CCIEについて詳しく知りたい方は、次の記事もご覧ください。
3. 独学で合格は不可能なのか
前述のようにネットワークスペシャリスト試験はかなり高難度の試験となっており、独学での合格が難しい方のための講座や通信教育が多数開講されています。
しかし仕事をしながら独学で合格することが無理というわけではなく、多くの方が独学で合格しています。現役のNE(ネットワークエンジニア)でなくても、中堅SE(システムエンジニア)として仕事をしつつ半年間独学で勉強して、ネットワークスペシャリストに合格した事例もあります。
また独学のメリットとデメリットには、次のような点が挙げられます。
【メリット】
• 参考書代ぐらいなので、費用を抑えられる。
• 自分のペースでこつこつ勉強できる。
【デメリット】
• 解説の意味が分からなくても、質問できる相手がいない。
• モチベーションの維持が難しい。
ネットワークエンジニアの実務経験がある、または職場など周囲に分からないことを質問できる環境にある方には、独学がおすすめです。
4. ネットワークスペシャリスト合格までの勉強時間
4.1 独学で勉強する場合
午前Ⅰ免除、実務経験あり、かつ論述が得意な方の場合、20時間程度で受かるケースもあります。しかし一般的には、半年~1年以上かかるだけでなく、複数回のチャレンジを覚悟する必要があります。
午前Ⅰ免除がない場合は、さらに20時間程度の勉強時間を確保しておきましょう。
4.2 講座を受講する場合
講座によりまちまちですが、通信の場合は受講期間2~6か月、サポート期間12か月を目安としている所が多いようです。
某有名資格スクールの通学講座は、150分×全11回の授業と模試で構成されているようです。独学では難しいと感じる方や、仲間がいれば頑張れるタイプの方は、講座を利用してみてもいいのではないでしょうか。
5. まとめ:NWは国家試験の中でも特に難関とされている
ネットワークスペシャリスト試験は情報処理技術者試験の中で高度区分に分類されているだけでなく、その他カテゴリの理系国家資格の中でも特に難関とされている試験のひとつです。
ネットワーク未経験者でこれから勉強したいという場合は、先にCCNAを取得してみるのもおすすめです。
次回はネットワークスペシャリスト試験のおすすめ参考書や勉強方法について、詳しくご紹介したいと思います。よければ合わせてご覧下さい。
当サイトプロエンジニアのコンサルタントが厳選したおすすめのフリーランス案件特集はこちら
特集ページから案件への応募も可能です!
実際にフリーランスエンジニアとして活躍されている方のインタビューはこちら