関連記事: フリーランスに開業届は必要?いつ出すの?メリットはあるの? では、フリーランスが個人事業主として開業届をすることのメリットと、開業届の提出方法についてご紹介しました。
今回はフリーランスエンジニアとして初めての確定申告の方法について、より簡単な方である白色申告を例にとってご紹介したいと思います。所得税の青色申告承認申請をまだ行っていないフリーランスエンジニアの方で今年の4月15日までに確定申告をする場合はこちらの記事を参考にしてください。
1. 確定申告とは?
1.1 確定申告の概要
確定申告とは一年間に得た所得にかかる税金を自分で計算して申告、納税する手続きで、ここでいう確定申告は一般的には「所得税の確定申告」を示します。
フリーランスなどの個人事業主であれば報酬が全額利益となったわけではなく、かなりの必要経費が発生している場合があります。そのため最終的に必要経費や各種控除などを差し引いた金額から改めて所得税を計算しなおすためにも、確定申告を行うことになります。
フリーランスエンジニアににとっての確定申告は、余計に支払っていた税金を取り戻す貴重な機会なのです。
1.2 確定申告が必要な場合と必要でない場合
クラウド会計ソフトfreeeのHPによると、確定申告が必要な場合と必要でない場合の条件は以下の通りとなります。
◆所得金額38万円以下が確定申告をしなくてもいいライン
納めるべき税金がある人は、必ず確定申告をしなければなりません。
その一方で、納める税金がない人は確定申告をしなくてもいいことになります。すべての人に「基礎控除」が38万円設定されているため、それ以下の所得の人には納税額が発生しません。フリーランスの場合、所得金額が38万円以下の場合は、納める税金(所得税)はありません。
1.3 白色申告と青色申告の違い
確定申告には「白色申告」と「青色申告」の2つがあります。
青色申告を行うためには事前に手続きが必要で、個人事業主としての開業から2ヶ月以内か、その年の3月15日まで(2021年は4月15日まで)に税務署へ申請する必要があります。
一方、青色申告の承認を受けていない方が行う申告が白色申告です。
白色申告と青色申告の特徴を、以下にまとめてみました。
白色申告とは | 青色申告とは |
---|---|
・「単式簿記」での帳簿付けが義務付けらるようになったが複雑なものではない ・事前の申請書の提出は必要なし ・特別控除が受けられない ・赤字を繰り越せない |
・「複式簿記」での帳簿付けは取引内容を記載した帳簿と決算の帳簿を複数作成する必要がある ・無条件で10万円、または65万円の特別控除を受けられる ・事前に「青色申告承認申請書」の提出が必要 ・赤字を3年間繰り越すことが可能 |
白は青より簡単な点がメリットであり、青は白より税金が安くなるという点でメリットがあります。自分の状況に合わせて、選択してみて下さい。
1.4 確定申告をしないと脱税になる!
源泉徴収を受けていない収入があった場合、確定申告を行わなければ脱税とみなされ、「無申告加算税」が課せられます。
この無申告加算税は通常の税金に加えて支払うペナルティがあり、納付すべき税額に対して「50万円までは15%」「50万円を超える部分は20%」の割合を乗じて計算した金額が課せられます。
この金額は申告漏れの内容にもよりますが、とても大きな数字になりがちです。うっかりと忘れてしまわないよう、注意が必要です。
【国税庁 - 確定申告を忘れたとき[令和2年4月1日現在法令等]】
2. 白色申告の事前準備
2.1 必要書類を準備する
◆ 白色申告に必要な書類
- 収支内訳書
- 確定申告書B
- 各種控除関連書類
下記の国税庁のホームページのリスト内からダウンロードします。
※確定申告ソフトを利用する場合は不要です。
- 収支内訳書:「収支内訳書(一般用)【令和元年分以降用】(PDF/783KB)」
- 確定申告書B:「申告書B【令和元年分以降用】(PDF/1,423KB)」
- 各種控除関連書類
生命保険料控除、地震保険料控除、医療費控除、給与所得がある場合など、申告内容に応じて必要な書類を準備します。
詳しくは下記のページでご確認下さい。
【国税庁 - 申告内容と主な添付書類など】2.2 経費の証拠となる領収書・レシートの保存をする
フリーランス(個人事業主)は自分で収入や経費、所得や所得税の金額を計算するため、その証拠となる(計算の基となる)書類を保存しておく義務があります。
税額は、収入から経費を引いた所得に応じて決まるため、いかに経費を漏れなく賢く申告し、所得を抑えられるかが肝心になり、経費は確定申告を行う上では重要なポイントです。
どこまでが経費として計上できるかの判断材料として基本的には、「事業を行う上で必要なもの」と考え、「売り上げに貢献している支払い」であれば経費という前提になります。
領収書やレシートは必ずもらって保管しておきましょう。
◆ 経費の具体的な項目や詳細について知りたい方は、次の記事も参考にしてみてください。
2.3 領収書を科目別に仕分けする
日々溜まっていく領収書は整理・管理していくことが大切です。おおまかで良いので項目別や月別で仕分けしておくことを心がけましょう。整理しない領収書を溜めてしまうとかえって面倒なことなってしまいます。最近では領収書入力の代行を行ってくれるアプリやクラウドサービスもあります。うまく使いこなして準備の負担の軽減を目指しましょう。
3. 確定申告書類作成
確定申告書類の作成は主に、確定申告ソフトなどを利用するか、自分で帳簿をつけて書類を作成するかのどちらかになるでしょう。
近年は、クラウド型確定申告ソフトのような、オンライン上で帳簿付け作業を簡単にし、申告書類作成を可能な限り自動化するソフトウェアの利用も主流になってきています。下記に詳しく述べます。
3.1 確定申告ソフトの利用
3.1.1 確定申告ソフトの種類
これまでの申告ソフトや会計ソフトは主に「インストール型」のパッケージ版の製品が多く、パソコンにソフトをインストールする、あるいはインターネットからダウンロードする製品が主流でした。
しかし、近年では「クラウド型」と呼ばれる製品が注目されており、インターネット上で利用登録を行い、オンラインでいつでも利用できる便利さから広く使われるようになってきています。
3.1.2 クラウド型確定申告ソフトのメリット
- クラウド上に保管されたデータをパソコンやスマホからいつでも利用可能
- 銀行やクレジットカードなどの明細と連携や同期が可能
- インストール・法令改正などによるバージョンアップ不要
- WindowsやMacなどのOSに依存しない
- データ取り込み機能などのスマホアプリとの連携が充実している
3.1.3 おすすめのクラウド型申告ソフト
ここでは白色申告で利用しやすい「クラウド型」申告ソフトをご紹介します。詳細については各ソフトのホームページをご確認下さい。
簿記の知識がなく、会計ソフトを使うのも初めてであれば、初年度は電話・メール・チャットなどのサポートを受けながら申告書作成に慣れることをオススメします。
白色申告はそこまで複雑ではないため、慣れてくれば、全ての機能を無料で利用できるサポートなしのプランへ変更するのもいいでしょう。
【料金】
サポートなしの場合は無料
ベーシックプラン4000 円/年(次年度は8,000円(税抜)/年)、トータルプラン7,000円/年(次年度は14,000円(税抜)/年)※すべて税抜
>> やよいプラン比較
スマホやタブレットのブラウザを通してパソコンと同様の作業ができます。
また「会計アプリfreee」というスマホアプリを使えばたいていの処理が可能なため、スマホやタブレットで処理したい方にもおすすめです。
白色申告であれば、メール・チャットなどのサポートが受けられるスタータープランで十分でしょう。
【料金】
最大30日間無料。
サポート内容や使える機能により3つのプランがある
スターター980 円/月(11,760/年)、1,980 円/月(23,760円/年)、3,316 円/月(39,800円/年)※すべて税抜、年払いの場合
>> freeeプラン比較
3.2 自分で帳簿をつけて作成する
3.2.1 帳簿をつける
帳簿のフォーマットは決まったものはありませんが、国税庁のホームページにて様式例が公開されています。
【国税庁 - 令和2年分の確定申告に関する手引き等】
ページ内の「帳簿の記帳のしかた(事業所得者用)」からフリーランスの白色申告向けの様式例がダウンロードできます。
詳細な書き方も載っているのでご確認下さい。
3.2.2 「収支内訳書」を記入する
収支内訳書は、帳簿につけた明細の一年分のまとめを記載する書類です。
前項の帳簿の「摘要」欄に記載する科目をこの「収支内訳書」の項目に合わせておくと、転記作業がかなり楽になるのでおすすめです。
◆ 収支内訳書(一般用)【令和2年分以降用】
詳細な記入例は、【国税庁 - 令和2年分の確定申告に関する手引き等】のページ内にある「令和2年分収支内訳書(一般用)の書き方」をご確認下さい。
3.2.3 「確定申告書B」を記入する
「確定申告書B」は、申告書類の本体にあたります。
◆ 申告書B【令和元年分以降用】
詳細な記入例は、【国税庁 - 令和2年分の確定申告に関する手引き等】のページ内にある「所得税及び復興特別所得税の確定申告の手引き(確定申告書B用)」をご確認下さい。
4. 申告書の提出
4.1 マイナンバーと本人確認書類を準備する
社会保障・税番号制度(マイナンバー制度)の導入により、平成28年より申告書類にマイナンバーの記載が必要になりました。また、マイナンバーが記載された本人確認書類の提示または写しの添付が必要になりました。
本人確認書類には、番号確認書類と本人確認書類の2種類が必要です。
<番号確認書類として使えるもの>
- 通知カード(紙のカード)
- 住民票の写し(マイナンバーの記載があるもの)
- 住民票記載事項証明書(同上)
<本人確認書類として使えるもの>
- 運転免許証
- 保険証
- パスポート
- 身体障害者手帳
- 在留カード
4.2 申告書を提出する
申告書の提出方法には、3種類の方法があります。
インターネット(e-Tax) | 郵送 | 税務署に直接行く | |
---|---|---|---|
メリット | ・時間や場所を問わす申告が可能 ・医療費の領収書など必要書類の提出を省略でき、還付も早い特徴がある |
・税務署の開庁時間に関係なく提出が可能 ・住基カード作成やカードリーダー購入の必要がない |
・作成の手伝いをはじめ、書類をチェックした上での問題点の指摘、領収書が使えるかどうかのチェックなど、様々なサポートを受けられる ・初めての方の場合、時間を取って行く価値は十分ある |
デメリット | ・マイナンバーカードと、パソコンに接続して使うICカードリーダライタ(家電量販店などで1500円程度~)が必要 | ・e-Taxに比べて時間がかかる ・申告の内容が本当に正しいかどうかを事前に確認することができない |
・開庁は主に平日に限られる ・税務署は平日でもかなり混雑しているので、時間に余裕が必要 |
5. 領収書と帳簿には保管義務がある
帳簿や領収書、レシートは税務署に提出する必要はありませんが、個人の確定申告にも同様の保管義務があり、帳簿は7年、請求書やレシートなどは5年の保管義務があります。明確な罰則規定はありませんが、無用の疑いを向けられる元となりますのできちんと保管しておきましょう。
6. 次こそ節税効果が高い青色申告承認申請を忘れずに!
白色確定申告を終えたら、早めに青色申告承認申請の手続きを行うことをお勧めいたします。
以前は帳簿を付けなくて良いというメリットがあった白色申告ですが、現在は白色申告も記帳義務化によりそのメリットはなくなりました。
青色申告は節税効果が高く、白色申告と青色申告の控除10万円の枠については、記帳の方法が同じ簡易簿記で申告の手間があまり変わりません。
切り替えたい場合は、青色申告をしたい年の3月15日までに「所得税の青色申告承認申請書」を納税地の所轄税務署へ届け出ることが必要です。
例:
↓
【2021年3月15日までに提出が必要】
ただし、新規開業の場合は、開業した日から2ヶ月以内に提出すれば(提出期限の3月15日を過ぎていても)今年度から青色申告することができます。
そのため、「所得税の青色申告承認申請書」は、開業届と一緒に提出することをおすすめします。
次回の申請では、フリーランスエンジニアとしてさまざまなメリットを享受できる所得税の青色申告承認申請を忘れないように、所轄の税務署に申請書を提出して下さいね。
【国税庁 - [手続名]所得税の青色申告承認申請手続】