社内SEとはいったいどのような職種なのか、仕事内容や一般のSEとの違い、必要なスキルなどを解説します。また社内SEの求人動向や、平均年収、さらに社内SEへの転職に失敗した事例とその解決策も、併せてご紹介します。
1. 社内SEとは
社内SEとは、文字通り社内の情報システム部で働くSE(システムエンジニア)のことを指します。
客先常駐ではなく、主に自社に出勤し、自社内のシステムおよびインフラの構築・管理業務を担当します。
基幹システムやサーバーの運用保守、社内ネットワークの管理、各種アカウントやライセンス管理、社員に対するサポートに至るまで業務内容は企業により幅広く存在します。
また社内SEの業務は、企業の規模やフェーズによっても変化します。
例えば企業の成長フェーズが「草創期」「成長期」「安定期」「変革期」とそれぞれ変化していくにつれ、社内SEに求められるミッションも変化していきます。
2. 社内SEの仕事内容
社内SEの実際の仕事内容を見ていきます。
社内SEとしての業務に明確な定義はなく、あらゆる社内システムに付随する幅広い業務を担当します。
2.1 社内システムの構築、運用、保守
まずは、社内システムの構築、および運用保守です。
社内で使う勤怠管理システムや、会計、在庫管理システムなど、その会社で利用するシステムを実装し、運用サポートを一貫して行います。
また、システムの長期的なメンテナンス、バージョンアップ、データ管理などを通して、自社の社員が安心して社内システムを利用できるようにします。
社員の入退社や部署異動によって、システムを利用するユーザも変わりますので、ユーザーアカウント管理や、各種ソフトウェアのライセンス管理なども社内SEの仕事です。
運用だけでなく、システムの追加要件の希望があれば、社員から要件をヒアリングして設計、実装も行いますので、社内SE=社内システムを担当するシステムエンジニアと言えるでしょう。
開発業務を外部に委託する場合は、開発ベンダーとの調整も行います。
2.2 社内インフラの構築、運用、保守
社内システムが常に安定稼働するよう整える必要があるため、システム開発の知識だけではなく、ネットワークやサーバーなどインフラ周りの知識も必要となります。
システムが重い、または動かなくなったり、ネットワーク機器の故障、サーバーが起動しないなど、社内インフラの保守対応も社内SEの仕事です。
2.3 社員からの問い合わせ対応
パスワードロックでログインできない!や、システムの使い方がわからない!など、社内ヘルプデスク業務として、システムに関する社員からのあらゆる問い合わせ対応も、企業によっては社内SEの仕事となります。
業種によっては、社員の中にITにあまり詳しくない人も含まれますので、専門的な知識を持つ社内SEは、頼りにされる存在です。
ヘルプデスク業務についての詳細は、こちらの記事でも紹介されていますので、ぜひ参考にしてください。
2.4 社内ITシステムのマルチプレイヤー
社内SEという言葉自体、企業によって捉え方も様々です。
単純にPCサポートだけを指す企業もあれば、その企業がサービスを提供している一般ユーザからの問い合わせを行うヘルプデスクでの意味合いで社内SEと呼ばれることもあります。
企業によっては、それらを兼任することもあるでしょう。
広義の意味で社内SEとは、社内のITシステムに関するマルチプレイヤーと言えます。
3. 社内SEとシステムエンジニアの違い
社内SEと一般のシステムエンジニアには、システムの開発・運用・保守の各フェーズで、関わり方に次のような違いがあります。
さらに大きな違いとして、次の3点が挙げられます。
• ユーザーが社員である
• 腰を据えて取り組める
• 経営の視点が必要である
それぞれの違いを、詳しくご紹介します。
3.1 ユーザーが社員である
社内SEとシステムエンジニアの主な違いは、ユーザーが顧客であるか、自社の社員であるかであると言えます。
システムエンジニアの場合、プロジェクト単位で顧客も変わりますが、社内SEは主に自社での業務であるため、社内システムの利用者は自社の社員となります。
自分が担当するシステムを使うユーザーが常に周りにいることで、ユーザーが困っていることを直接聞ける、利用している姿を間近で見られる、ありがとうという声を直接聞くことができるなど、よりユーザーに近い現場で働きたいエンジニアには、適した職種であると言えます。
3.2 腰を据えて取り組める
システムエンジニアの場合、プロジェクト単位で使用する言語や常駐先が変わることも珍しくありません。
しかし、社内SEはプロジェクト単位ではなく、常に社内システムの業務を行います。
社内での継続的な業務になりますので、ノウハウを蓄積しやすい傾向にあります。
社内システムの環境に精通すればするほど、ルーチン作業も多くなる傾向があるのも事実ですが、企業の根底である社内システムという大きなプロジェクトにじっくり腰を据えて取り組めるのは、社内SEのメリットでもあります。
3.3 経営の視点が必要である
社内SEのマネージャークラスともなると、社内システムが経営の視点から、いかに効果を出せる業務として遂行できるか、が問われるようになります。
コスト部門とされがちな情報システム部門において、常にシステムの費用対効果を検討する必要もあるでしょう。
社内システムの側面から企業経営を考える、これは社内SEだからこそできることであり、社内SEは自分の主体性次第で業務の幅は無限に広がる、大変やりがいのある仕事だと言えるのではないでしょうか。
システムエンジニアについての詳細は、こちらの記事でも紹介されていますので、ぜひ参考にしてください。
4. 社内SEの求人
4.1 社内SE×未経験可の求人
社内SEの求人は、未経験でも募集している企業はあります。
未経験可で募集している企業の特徴として、入社後に数か月かけて研修を行い、OJTを通して実務経験を積むなど、研修体制を充実させていることが挙げられます。
そして、積極的に技術を習得して活躍していきたいという応募者の意欲を最も重視しています。
自分なりに技術書を読んで勉強している、自宅でサーバーを立ち上げてみているなど、未経験でも何かしらの自己啓発を行っていることを示せると良いでしょう。
業種未経験可、学歴不問の人材募集なども存在しますので、社内SEはこれからIT業界にジョブチェンジしていきたいという方がチャレンジすることも可能と言えます。
4.2 社内SE×転勤なしの求人
自社勤務ですから勤務地が固定、つまり転勤なしであることを希望して社内SEを志望する方もいると思います。
会社自体が移転しない限り、社内SEの転勤の可能性は少ないと言えます。
しかし、全国に支社があり、それぞれに情報システム部を持つ企業などであれば、社内SEであっても転勤の可能性もあるでしょう。
求人広告では、初めから「転勤なし」を謳っている企業もありますので、その企業がどのようなポジションで社内SEを募集しているのかを把握し、面接の際に転勤があるかどうかを予め聞いておくと、ミスマッチを防ぐことができます。
4.3 社内SE×フリーランスの求人
社内SEのフリーランス求人は、主にエンジニアが存在しない非IT企業に多く存在しています。
非IT企業では、エンジニアを育てる環境が少なく、即戦力となるフリーランスが社内SEとして必要です。
フリーランスの社内SEには、「IT系なら何でもお任せください」といった社内全体のIT全般を広く把握出来る人材が求められます。
具体的な業務内容として、
• 社内の非ITメンバーからの質問
• キッティングや初期ツールの設定
• アドレスの付与などのヘルプデスク系作業
• インフラの保守
といった業務のほかにも、システム開発やインフラを外部の開発ベンダーに全て委託している場合、その開発ベンダーとの折衝の担当者になるケースもあるでしょう。
▶ 社内SEの求人を探すならこちらから(フリーランス)
4.4 社内SE×企業によって業務はさまざま
問い合わせ窓口(ヘルプデスク)としての社内SE募集や、ネットワークなどインフラの運用管理エンジニアを社内SEと呼んだり、新規システムの設計や構築の募集だったりと、企業によって社内SEという人材の枠組みも様々です。
よって、必ずしも「社内SE」という言葉で募集がかかっているわけではないので、注意深く探してみると、希望する企業がより見つけやすくなるかもしれません。
4.5 社内SE×転職エージェント
社内SEの求人を探す場合、転職エージェントを利用するのもおすすめです。
転職エージェントでは、履歴書の書き方や面接のアドバイスなど、コンサルタントが転職活動の様々なサポートを行うだけでなく、応募者の希望に沿った求人を紹介してもらえるなど、個人で行う転職活動にはない手厚いサービスを受けることができます。
また、中には非公開求人を取り扱っている場合もあり、希望の求人に巡り合えるチャンスがアップする可能性も高まります。
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5. 社内SEの平均年収(正社員/フリーランス)
まず、IT/通信業の平均均年収ですが、DODAが発表した平均年収ランキング2020の調査によると、以下のように発表されています。
平均年収(全体) | 466万 |
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平均年収(男女別) | 男性 475万 女性 383万 |
平均年収(年代別) | 20代 368万 30代 492万 40代 594万 50代 736万 |
では、実際の社内SEの年収はどれくらいになるのでしょうか。
当サイトProEngineerの求人情報から正社員とフリーランスにおける社内SEの平均年収を算出したところ、2020年4月現在で、以下の結果となりました。
正社員平均年収 | 455万円 |
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フリーランス平均年収 | 596万円 |
※ フリーランスは、年金・保険・税金など福利厚生、賞与などの点で正社員とは異なってきます。
出典:2020年4月|プロエンジニア正社員自社保有案件の一部より算出
2020年4月|プロエンジニアフリーランス自社保有案件の一部より算出
上記のとおり、正社員の社内SEとしての年収は平均450万円前後と言われていますが、外資系であったり上流工程を担う場合やフリーランスでは、1000万となるケースも。
より年収アップを図るためには、システム運用やユーザーサポートからキャリアアップしてフリーランスを目指したり、正社員の場合では経営側からのシステム立案ができることなど、やはりマネージャークラスなど管理職のポジションとなる必要があるようです。
6. 社内SEに必要なスキル
社内SEに必要なスキルとして、次の4つが挙げられます。
• システム開発とインフラの基礎知識
• 問題解決、問題提案
• マルチタスク能力
• 業務知識
その理由を、詳しくご紹介します。
6.1 システム開発とインフラの基礎知識
まずは社内システム管理を行うための知識です。
一連のシステム開発のスキルや、ITの基礎知識となりますが、その範囲は非常に広いため、日々の業務と自己啓発によって蓄積されるものと言えるでしょう。
また、社内SEは、経験を積めば積むほど、社内のシステム全般における運用保守を担うことが多いので、システムの開発知識のみならず、サーバーやネットワーク等のインフラの知識もあると良いでしょう。
6.2 問題解決、問題提案
社内システムの側面から、社員をサポートし、どう企業に貢献できるのか。システムの改善点などを考えて提案するのも社内SEの仕事ですので、問題提案スキルが必要です。
また、あらゆる問題を解決するために、自ら原因を突き止め、解決への糸口を探していく問題解決能力が問われます。
6.3 マルチタスク能力
システム更改の検討をしながら、飛び込みでやってくるシステムトラブルに対応しつつ、尚且つ社員のサポートも行うなど、複数の作業を並行して行う必要もあるので、マルチタスクスキルも必要です。
6.4 業務知識
ITエンジニアとしての知識の他にも、その企業の事業に沿った業務知識が必要となります。
会計システムであれば簿記の知識、金融システムであれば金融の仕組みなど、社内SEとして企業に即した知識が欠かせません。
7. 社内SEへの転職や案件受注に失敗するエンジニアも多い
社内SEへの転職やフリーランス案件の受注に失敗するエンジニアも多く存在します。失敗例には、次のような理由があります。
このように社内SE転職で失敗しないために気をつけるべきポイントとしては、次の3つが挙げられます。
• 多様な開発手法を若手のうちから経験しておく
•「社内SE=楽な仕事」ではないと理解しておく
• 全くの異業種からの転職をいきなり目指さない
■ 多様な開発手法を若手のうちから経験しておく
アジャイルとウォーターフォールを両方経験しておくなど、多様な開発手法を若手のうちから経験しておくことが重要です。
■「社内SE=楽な仕事」ではないと理解しておく
「ワークライフバランスを重視できる」と語られがちですが、実際には自社開発やヘルプデスクの役割を求められ、業務範囲が広くてハードという面も併せ持った役職です。楽な仕事をイメージしていると、ギャップに苦しむ方も。
■ 全くの異業種からの転職をいきなり目指さない
たとえ社内SE自体の経験があっても、全くの異業種の企業への転職は難しい場合があります。転職先の経営課題などを正確に把握した上での、デジタルトランスフォーメーション(DX)推進の高品質な提案が求められることもあります。そのためにはその業界での業務経験を通した知識も重要です。
8. 社内SEが取っておきたい資格
社内SEとして業務を円滑に遂行させるため、資格を取得することは大変有意義です。資格を取得するために体系的に知識を学び、整理するという点で、スキルアップに有効だからです。
企業によっては、資格を保有していることを応募条件に挙げている場合もありますので、転職活動にも役立つでしょう。
これら4つの資格は、ITの基礎とインフラの知識を学ぶために最適です。
• 基本情報技術者試験・・・ITエンジニアとしての基礎知識
• CCNA・・・ネットワークの基礎知識
• LinuC(LPIC)レベル1・・・サーバーOSに多く用いられるLinuxの基礎知識
• オラクルマスター・・・データベースに多く用いられるOracleの基礎知識
自分の業務内容に合わせて、取得を検討してみてはいかがでしょうか。
9. まとめ
いかがでしたでしょうか。
社内SEへの転職希望者は多く、人気の高い職種です。
企業のシステム環境をサポートすることでエンジニアとして活躍できる社内SEに、ぜひ挑戦してみてください。