近年、データサイエンスの分野では、専門性を高めてフリーランスとして働くことがますます一般化しています。しかし会社をやめて独立するとなると「最初の案件を受注するにはどのぐらいのスキルが必要なの?」「必要な手続きには、どんなものがあるの?」「今はITエンジニアで、データサイエンス分野では実務未経験でもデータサイエンティストになれるの?」など、不安や疑問が多いのではないでしょうか。
本記事ではフリーランスのデータサイエンティストの業務内容から、案件の受注に求められるスキル、平均年収や、実務未経験からフリーランスデータサイエンティストになった方の実例まで、詳しくご紹介します。これからデータサイエンティストを目指している方なども、ぜひご覧ください。
1. フリーランスのデータサイエンティストとは?
フリーランスのデータサイエンティストとは、データサイエンティストの業務をフリーランスで請け負う、データサイエンスのプロフェッショナルです。原則として企業には所属せず、案件単位でプロジェクトに参画して依頼された業務をこなします。
1.1 フリーランスデータサイエンティストの業務内容
フリーランスデータサイエンティストの業務内容には、次のようなものがあります。
◼ データ分析と予測モデリング
フリーランスのデータサイエンティストは、クライアントの戦略立案と意思決定をサポートするための、データ分析と予測モデリングを行います。
統計学の手法を用いて過去のデータを分析して、パターンやトレンドを抽出します。さらに予測モデルを作成し、今後の市場動向や変動を予測します。
たとえばECサイトでの顧客の過去の購入データやアクセスデータを分析し、今後の変動を予測した上で、更なる改善案を立案するといった作業を行います。
◼ プログラミングとデータ処理
ECサイトを例にした場合、過去の購入データやアクセス関連のデータは極めて膨大です。そのためPythonやRなどのプログラミング言語を使い、大量のデータをまとめて処理し、有益な情報を抽出するといった工程もデータサイエンティストの役割です。
データを抽出・整理するだけでなく、データクレンジング、データ変換、データ統合などの「データの前処理」も、プログラミングで実装できる必要があります。
◼ データ可視化とレポート作成
クライアントは、統計学やデータの読み取りに慣れているとは限りません。そのため複雑なデータを直感的に理解できるように、表やグラフでデータを可視化して、分かりやすいレポートにまとめる作業も重要です。
1.2 フリーランスデータサイエンティストの平均年収
当サイト「プロエンジニア」に登録されている「データサイエンティスト」の案件※1 を集計したところ、平均年収は約1020万円でした。
月給の最低額は40万円から、最高額は100万円以上です。つまり自身のスキルや案件との相性にもよりますが、年収1000万円も十分に狙えます。
ちなみに、「オープン系SE・プログラマ」案件の平均年収は888万円、「コーダー/マークアップエンジニア」は588万円です。IT系職種の中でも、データサイエンティストは比較的高年収が狙える職種だと言えます。
なお厚生労働省が発表する賃金構造基本統計調査(職種別)※2 によると、R4年度はシステムエンジニア(システムコンサルタント・設計者)の平均年収は約660万円、プログラマー(ソフトウェア作成者)の平均年収は約550万円です。
厳密な職種は異なりますが、多くのITエンジニアはフリーランスになることで平均年収アップが見込める状況にあります。
※1:2023年6月時点でプロエンジニアに登録されているフリーランス案件情報のうち、月額報酬の下限額および上限額が公開されている案件より、単価平均×12か月で年収平均を算出
※2:賃金構造基本統計調査 / 令和4年賃金構造基本統計調査にて公開されている職種別賃金のうち、「決まって支給する現金給与額」*12か月分に「年間賞与その他特別給与額」を加えた値を算出
案件別に詳しい相場を知りたい方は、次のページをご覧ください。
▶ 参考:データサイエンティストの案件|フリーランス案件の特徴・単価・必要スキル
1.3 フリーランスのデータサイエンティストの具体的な働き方:1日のタイムスケジュール例
参考として、当サービス「プロエンジニア」を通じて実務未経験からフリーランスデータサイエンティストになった方の、1日のタイムスケジュールを見てみましょう。
元々正社員で組み込みエンジニアをしていた中村さん。上流工程から携わる機会もあり、現状にも特に不満はありませんでしたが、若干マンネリを感じていました。そんな中、自己学習をきっかけにデータサイエンティストという職種に興味を持ちました。
そこから未経験でもデータサイエンティストの案件に成約できたポイントは、資格取得や自己学習の成果をまとめたポートフォリオ作成など、言葉だけではなく行動で示すことだったそうです。
午前中は仮想オフィスに集まって体調チェックやタスクのプランニングを行い、その後はペアプログラミングという方式で定常業務を行っています。作業は週に3日はリモートで行い、残業なしという働き方を選択しています。
インタビューの全文は以下の記事に掲載していますので、ぜひあわせてご覧ください。
2. フリーランスのデータサイエンティストに求められるスキル
フリーランスのデータサイエンティストになるために必要なスキルとして、次の3つが挙げられます。
2.1 データ解析やプログラミングのスキル
まず、データ解析やプログラミングといった、データサイエンスに関するスキルは必須です。独立するまでに身につけておきたいスキルは、具体的には次のようなものです。
• BIツールや Pythonなどを用いたデータ解析スキル
• Python、Rなどを用いたデータ処理スキル
• スクレイピングなどを活用したビッグデータの収集スキル
• 統計学の知識
2.2 自己管理スキル
フリーランスは自由度が高い反面、自分で自分を律する必要があります。さらに体調を崩すと仕事ができない、つまり収入がなくなってしまうリスクがあるため、体調面などもしっかりと自己管理する必要があります。
2.3 営業や交渉などのコミュニケーションスキル
フリーランスは、自分で営業をして仕事を取ってこなければなりません。さらに単価の交渉なども自分で行うなど、コミュニケーション能力が必要です。
またフリーランスは案件ごとに新しいチームに入って仕事をする必要があるため、初対面のメンバーともスムーズに意思疎通できる程度の社交性も重要です。
3. 会社員からフリーランスデータサイエンティストになる「独立の流れ」
フリーランスのデータサイエンティストになるには、やはりまずデータサイエンティスト職に就職・転職し、経験を積んでから独立する流れがセオリーです。しかし新卒などでデータサイエンティストとして採用されるのは、狭き門なのが現実です。とはいえフリーランスのデータサイエンティストには、少しですが実務未経験でもOKの案件もあります。
実際に弊社プロエンジニアのサービスを利用し、会社員エンジニアからフリーランスのデータサイエンティストに転身した方もいらっしゃいます。ここでは、ITエンジニアからフリーランスデータサイエンティストになるまでのロードマップをご紹介します。
まず、ITエンジニアとして就職・転職します。このとき扱うプログラミング言語の種類はあまり問いませんが、特にPythonやRなどデータサイエンス向きの言語だと、データ解析の独学が楽になります。
ITエンジニアとして実務経験を積みながら、データ解析スキルを磨きます。独学が進んできたら、いずれポートフォリオにできるように、自分の興味のあるデータを解析するシステムを自作してみましょう。
ポートフォリオを用意できたら、これまでの業務経験をまとめたスキルシートも準備します。スキルシートの詳しい書き方を知りたい方は、次の記事も参考にしてみてください。
もしプログラミングも未経験の状態からフリーランスを目指しているという方は、こちらの記事も参考にしてください。
ポートフォリオやスキルシートが用意できたら、次にフリーランスになる準備をします。
フリーランスとして働くエンジニアの多くは、個人事業主です。
開業に必要な手続きについて詳しくは、フリーランスデータサイエンティストの開業手続きチェックシートを確認してください。
ここで専業のフリーランスになる場合は会社を退職しますが、副業から始める場合は退職しなくても大丈夫です。逆に初めから大規模になることが分かっている場合、法人として起業する道もあります。
また会社員と違い、フリーランスは自分で案件探しに動く必要があります。案件を探す方法について詳しくは、フリーランスデータサイエンティストの案件の探し方を確認してください。
4.【2024】フリーランスデータサイエンティストの開業手続きチェックシート
フリーランスとして独立するには、色々な手続きが必要です。ここでは個人事業主として開業する場合に、最も基本的に必要な手続きを一覧にしました。
個人事業主の開業には、納税地(住民票に記載されている住所)の税務署長に「開業届」と「所得税の青色申告承認申請書」の提出が必要です。このとき会社を退職する場合は、厚生年金から国民年金への切り替え手続きも行います。
健康保険については、前職の健康保険組合に退職後2年間は継続して加入することができます。2年の猶予がありますが、早めに切り替えを行っておくことがおすすめです。
なおこのチェックシートに挙げている項目は、最低限必要な手続きだけです。データサイエンティストの場合、売上が1000万円を越えることも多いでしょう。その場合、税務署に「適格請求書発行に関する事業者登録申請書」を提出し、インボイス制度に登録する必要があります。
フリーランスになるための手続きについて詳しくは、ITエンジニア専門フリーランスエージェント「プロエンジニア」のキャリアアドバイザー、編集部員が担当する次の記事も参照してみてください。
5. フリーランスデータサイエンティストのメリットとデメリット
ここまで、フリーランスになるために必要なスキルや開業までの流れをご紹介してきましたが、実際にフリーランスになった場合のメリットやデメリットを、表にまとめました。
フリーランスになると、まず自分でやりたい案件を選んで受注できるというメリットがあります。自分の進みたい方向に合わせて仕事内容や働く相手を選べるだけでなく、自分のライフスタイルに合わせて働く場所や時間を選ぶことができます。もちろん、自分の努力次第で高収入を目指せるというメリットもあります。
対するデメリットとしては、収入が不安定になる点が挙げられます。フリーランスは怪我や病気で体調を崩して働けない期間があると、その間は基本的に無収入です。会社員より社会保障が少ないため、自分で代わりになる保険などを探して加入しておく必要があります。またこの収入が不安定であるという点から、会社員の頃より社会的信用が低下し、カードやローンの審査を通りにくい傾向があります。
クレジットカード作りや家や車のローンを組む予定がある方は、個人事業主になる前に手続きを済ませておくことがおすすめです。
6. フリーランスデータサイエンティストの案件の探し方
フリーランスのデータサイエンティストが案件を探す場合、次のような方法があります。
この中でもおすすめなのは、フリーランスエージェントの利用です。特に専業のフリーランスとして独立する際には、信頼できるエージェントを複数見つけておくことがおすすめです。
例えばクラウドソーシングサービスを利用する場合、自分に合った案件探しから応募まで、全て自分で行う必要があります。それに対して、フリーランスエージェントを利用すると、キャリアコンサルタントが代わりに「合いそうな仕事」を探してくれるほか、まだ独立していない方であれば独立の支援サポートなども受けられるためです。
またクライアントとトラブルが発生した場合など、万一のことがあってもエージェントが仲介に入るので安心です。特に雑務を減らしてデータサイエンティストとしての業務に集中したいという方に、フリーランスエージェントはおすすめです。
7. 実際にフリーランスデータサイエンティストに転身した方の具体例とご本人へのインタビュー
実際に会社員の組み込みエンジニアからフリーランスのデータサイエンティストに転身した方の具体的な事例として、ご本人へのインタビューを紹介いたします。
◼ フリーランスデータサイエンティストの中村さんへインタビュー
以前の現場ではシステムをゼロから開発していたのですが、システム完成後、若干マンネリを感じてしまい、そんな中、自己学習をきっかけにデータサイエンティストという職業を知り、興味をもちました。
僕自身サッカーが好きなので、試しにサッカー選手の特性を分析するシステムを自作してみたのですが、知識も技術力も独学レベルなので思うように仕上がらず…このシステムを更に加速させたいという気持ちから、実際にデータサイエンティストとして仕事をしたいと思い、すぐに案件探しを始めました。
(中略)
機械学習の案件は多いのですが、自分の理想の案件になかなか出会えず苦労しましたね。
そもそも未経験でも可能な案件が少ないのもあります。
プロエンジニアから紹介いただいた案件は2件でしたが、どちらも自分の理想をしっかり抑えている案件だったので、紹介いただいた時は驚きました。
数字だけ見ると少なく感じますが、案件を選ぶ手間が省けて本当に助かりました。
8. フリーランスデータサイエンティストの市場動向と将来性
近年では大量データを扱うSaaS企業が増加しており、それに伴いデータサイエンティストとして専門性のある人を採用する企業が増えてきています。
さらにビッグデータを活用する場面も今後ますます増えることが予想され、今後さらなる市場の拡大が期待されています。市場の拡大に伴って、専門性の高いデータサイエンティストの需要も、さらに増え続けることが期待されています。
詳しくは、プロエンジニアデータサイエンティストフリーランス案件紹介ページの「特徴・単価・必要スキル」をご確認ください。
▶ 参考:データサイエンティストフリーランス案件の特徴・単価・必要スキル
なお現在20代後半から30代前半にかけてのミドルクラスを担う人材については、IT業界全体で需要の高い傾向が続いています。
詳しくは「プロエンジニア」のキャリアコンサルタントと、未経験からITエンジニアを目指す「プログラマカレッジ」のキャリアアドバイザーによる対談記事をご覧ください。
9. フリーランスデータサイエンティストのキャリアパスや目標設定の例
フリーランスデータサイエンティストのキャリアパスとして、基本的にデータ解析のスキルを磨いて専門性を高めてゆくことが挙げられます。
データサイエンティストが長くフリーランスを続けていくコツは、誰にも負けない専門性の高さを保つことです。実は40代以上のエンジニアに企業が期待するのは「必殺技スキル」です。「この技術は誰にも負けない」と思えるようなスキルを身につけることを目標にすると、フリーランスを長く続け、かつ単価を上げてゆくことにつながります。
なお 2024年1月現在、実際にプロエンジニアで支援しているフリーランスの4割が40代以上です。その中には、50代や60代の方も少なくありません。
23年間フリーランスを続けている淺原さんのインタビューも、ぜひご覧ください。
10. まとめ
データサイエンティストがフリーランスになることのメリットは、やはり条件に合った案件を自分で選ぶことができるという点です。自分のライフスタイルに合った働き方を選べるだけでなく、自分の興味のある分野を選んで専門性を高めることができるので、管理職になるより第一線でスキルを磨き続けたいという方にもおすすめです。
この記事が、フリーランスという働き方が本当に最適なのかを考える、お手伝いになりましたら幸いです。
弊社が運営するプロエンジニアでは、業界に精通したエージェントが、あなたに最適な案件探しを全力でサポートいたします。これからフリーランスへ転身したいと考えている方も、ぜひ一度プロエンジニアにご相談ください。
当サイトプロエンジニアのコンサルタントが厳選したおすすめのフリーランス案件特集はこちら
特集ページから案件への応募も可能です!
実際にフリーランスエンジニアとして活躍されている方のインタビューはこちら