フリーランスエンジニアと会社員エンジニアの2つの働き方の違いについて調査しました。
一つの企業に定年まで勤め上げるスタイルが主流だった昔に比べ、近年では転職が珍しくない時代です。現在は会社員として働いているけれど、いずれはフリーランスエンジニアとして独立して自分の力を試してみたい、と考えている人も多いのではないでしょうか。
エンジニアとして将来を見据えた際、より自分らしく働くためのヒントとして、本コラムの内容をぜひ参考にしてみてください。
1. フリーランスエンジニアと会社員エンジニアの働き方の違い
近年では時短勤務や在宅勤務制度など、IT企業においてもフレキシブルな働き方が導入され始めています。
その中で、エンジニアの最も自由な働き方と言えば、「フリーランスエンジニア」を思い浮かべる方も多いと思います。
勤務地や勤務形態をはじめ、エンジニアとして使用する言語や開発環境など、自分で業務の案件が選べるフリーランスは、希望するキャリアパスを描くための手段としては最適と言えます。
では、フリーランスエンジニア、会社員エンジニアの違いを詳しく知るために、それぞれの働き方の特徴と違いを下記の表で比べてみましょう。
フリーランスエンジニア | 会社員エンジニア | |
---|---|---|
働き方の違い | ・望まない案件は拒否できる ・契約単位で仕事をする ・作業場所・時間を自由に決められる(常駐型を除く) |
・希望通りの仕事ができるとは限らない
・会社の命令に従い仕事をする ・基本的に勤務地や労働時間が決まっている |
2.フリーランスエンジニアと会社員エンジニアの年収比較
フリーランスと会社員の年収はどのくらいなのか、本サイトProengineer内の求人情報から、フリーランスエンジニアと会社員エンジニアの年収をそれぞれ算出してみました。
2.1 会社員エンジニアの年収
会社員エンジニアの年収傾向を把握する目的で、2018年5月現在、本サイトに掲載されている正社員求人約600件の年収分布を独自に算出しました。 結果は次のグラフのとおりです。
-
(参考:
2018年5月 ※プロエンジニア自社保有案件の一部より算出)
■ 最も多い年収層は平均550万
最も多い年収層は、平均550万で36%となりました。 1年を12か月で単純計算すると、月収は約45万となります。 しかし正社員の場合は、年収の中にボーナスが含まれていることを考慮すると、実際の月収は45万よりも少ない金額である、と読みとることができます。
■ 約半数となる46%が平均400万~450万との結果に
平均400万以下が13%、450万が33%となり、合計すると46%、全体の約半数が平均年収450万までという結果になりました。 単純計算すると、平均月収は約37.5万(ボーナス分含む)となります。
2.2 フリーランスエンジニアの年収
続いて、2018年5月現在で、本サイトに掲載されているフリーランス求人約600件の年収分布を算出したところ、次のグラフのような結果となりました。
-
(参考:
2018年5月プロエンジニア自社保有案件フリーランス求人情報の一部より算出)
■ 最も多い年収層は平均660万
本サイトに掲載されているフリーランス求人情報の「1か月の月額単価×12か月」で年収を計算した結果です。 最も多い年収層は660万、次いで780万が多く、フリーランスエンジニアは平均年収660~780万あたりが多いということがわかります。
前述した会社員に多い年収層が550万でしたので、会社員とフリーランスを比較すると、フリーランスの年収の方が、高くなる傾向であることが伺えます。
■ フリーランスには年収1000万越えも
また、年収1000万を超える案件が全体の10%を占めているのもフリーランスの特徴と言えます。フリーランスは案件毎の契約となり、高いスキルを必要とする案件はそれだけ単価も高くなります。会社員と比べると、フリーランスはスキルと年収がより比例しやすい働き方と言えるでしょう。
◆ 職種別のより細かい単価や年収については、次の記事も参考にしてみてください。
3. フリーランスエンジニアと会社員エンジニアのメリット・デメリット
フリーランスエンジニアを目指す場合には、事前にメリット、デメリットをきちんと把握しておくことが大切です。
在宅案件であれば、働く場所や時間も自分の裁量次第となることも多く、フリーランスのメリットは、何と言っても自由度が高いことが挙げられるでしょう。
一方、「仕事が安定しない」ことがフリーランス最大のデメリットとして挙げられることが多いです。また、確定申告など業務以外のスキルも必要となるほか、有給や失業という概念がありません。
会社員であれば業務に行き詰った場合でも上司や同僚からアドバイスをもらえたりしますが、フリーランスの場合は孤独になりがちです。在宅型の場合は特に、一人で業務を完結させることができるだけの高いスキルと問題解決能力が必要です。
フリーランスエンジニア | 会社員エンジニア | |
---|---|---|
メリット | ・自分で案件を選ぶことができる ・時間や場所に縛られない働き方を実現しやすい ・同じスキルならば収入アップが見込める |
・安定した収入が得られる ・社会保険がある ・社会的信用度が高い ・仕事の相談やアドバイスを受けやすい |
デメリット | ・安定した収入を得られるかは自分(スキル)次第 ・有給・失業保険等がない ・仕事の相談・アドバイスが受けづらい ・社会的信用度が低い |
・自分で仕事を選べない ・時間や場所が決まっている ・高いスキルを持っていても収入が変わらない場合がある |
4. 在宅フリーランスエンジニアになるためには
多様な働き方が見直されるようになってきた昨今では、IT企業においても、在宅型のワークスタイルが導入されつつあります。「在宅で働きたい」という理由から、フリーランスエンジニアを目指す方も多いのではないでしょうか。 ITエンジニアは、自分の売りとなる分野のスキルを見定め、常にそのスキルを高めておくことが求められます。 フリーランスの場合は特に、時代のニーズや自分のスキルに対して、より敏感によりシビアに捉えておく必要があります。
在宅フリーランスエンジニアになるには、少なからず企業に所属して実務経験を積んだ後に、そこで培った高い技術力を生かして転身する、というケースが王道と言えるでしょう。 業務の進め方や、クライアントを探す際の人脈など、会社員時代でしか築けないものがありますので、実務経験は持っておくに越したことはありません。 中でもプログラマーは、スキル次第で収入アップを見込める職種の一つです。 習得に時間はかかりますが、独学からスクールまで、学習方法も選ぶことができるので、ワークスタイルに合わせて働きたい、手に職を求める女性にもおすすめです。
5. フリーランスエンジニアで年収を上げる方法
フリーランスエンジニアは年収アップに繋がりやすいということは前述のとおりですが、ここではフリーランスになってさらに年収アップを図るために必要なことをまとめてみました。
■ スキルアップで強みを増やす
IT業界はシステム開発、ネットワーク、データベースなど分野が広いだけでなく、業務内容も設計構築、プログラミング、運用など、企業によっても必要となるITスキルは様々あります。
フリーランスエンジニアは、企業には属さない個人としてITスキルを売りとした働き方となるので、少なくとも1分野についての高いITスキルを持つことがまず原則と言えます。
その上で、ネットワークのスキル+αで英語力も持ち合わせている、インフラ周りに強くプログラミングも書けるなど、これまでの経験から自分の強みとなるスキルを洗い出し、さらにそこから派生させて強みとなるスキルを増やすことが必要と言えるでしょう。
■ 案件の選び方を工夫する
案件を選ぶ際は、得意分野の案件だけを選び続けるのではなく、案件単価の高いものを選んだり、大規模プロジェクトを手掛ける開発会社や長期開発案件、新しい技術を使用するプロジェクトなど、今後の自分のスキルアップに繋がるような案件を選ぶこともポイントです。
目先の働きやすさだけに固執せず、案件数を増やしたり、長期的な目で案件を選んで多くの経験を積んでいくことで、将来の年収の幅が変わってくるでしょう。
■ 新規顧客を開拓する
フリーランス白書2019によると、仕事獲得の経路として・「人脈」や「過去・現在の取引先」など、いわゆる縁故により仕事を獲得している人が大半を占めています。
これまでの仕事において信頼関係が築けている既存顧客との仕事であれば、お互い良好な状態で仕事を継続できるでしょう。しかし、信頼関係のある顧客が増えれば増えるほど、そこから受注の選択肢が広がっていきますので、従来の顧客に加えて新規顧客の開拓を進めておくことも必要です。
■ フリーランスエンジニア向けのエージェントサービスを利用する
案件獲得にあたっては、フリーランスエンジニア向けのエージェントサービスを利用するのもお勧めです。営業を代行してもらえたり、年齢不問や非公開案件などの、自分だけでは見つけにくい案件を紹介してもらえることもあります。フリーランス白書2019によると。年収 800 万円以上の高収入者が 多いのは「エージェントサービス」の利用からという結果が出ています。継続して安定した収入を得るためには有効的な活用方法と言えるでしょう。
6. フリーランスエンジニアの将来
フリーランスエンジニアの将来は、仕事がない期間がある可能性などあれこれと考え出すと、何かと心配なことが生まれてくるのは当然のことです。
特に女性は結婚や出産などのライフステージによって、若い頃と同じ働き方ができなくなったり、男性であっても体力的に長時間働くことが難しくなったりすることも考えられます。ここでは、フリーランスエンジニアの30代~40代の実態を調べてみました。
6.1 フリーランスエンジニアの半数以上が30~40代という調査結果も
一般社団法人プロフェッショナル&パラレルキャリア・フリーランス協会が発行した「フリーランス白書2019」にて、フリーランスエンジニアを対象とした調査結果が公開されています。
この調査結果の回答者属性を見ると、30代は40.3%、40代は33.0%であるという結果が出ています。
20代若年層の間は企業に勤務してノウハウや仕事内容を体得し、スキルと実績を積み上げた上で、30代~40代からフリーランスになっている人が多いことが読み取れます。
6.2 フリーランスの年齢による年収相場の差は少ない
IPAの「IT人材白書2016」の調査によると、フリーランスの年収700万までの場合では、年代による大きな差が見られません。フリーランスは案件毎で契約をするため、若年層であってもスキルがあれば高い年収を得られる可能性があることがわかります。
しかし、年収700万~1000万の割合をみると、30代が8.8%、40代が14%、50代で17%となっており、年齢により年収が上がっている傾向が見られます。
高単価案件は、それだけ高いスキルを要するため、豊富な業務の経験者40代~50代は年収も上がる傾向であることが推測できます。
6.3 年齢による採用難化はどちらも同じ
会社員エンジニアの方が「安定」していて、社会的な「信用」があるというイメージが強いですが、たとえ会社員であっても定年まで勤められるという保証はどこにもありません。
フリーランスは企業という後ろ盾がないぶん、自分のスキルや市場価値に対して、より敏感かつ貪欲でいられるのかもしれません。
年齢からみるエンジニアの採用は、年齢が上がるにつれて採用されにくくなるのは会社員でもフリーランスエンジニアでも大差はないように感じます。
6.4 年齢を重ねたからこそ活躍できること
IT技術の流れは速いので、将来のIT技術動向は予測できません。
2019年現在、最新トレンドとされている内容であっても、数年後には、逆にその技術を有することが貴重な人材となり得るかもしれません。
実際に現在では、COBOLを使用した汎用機系システム開発の現場などでは、40~50代の方が活躍しているケースもあります。
つまるところ、エンジニアの将来は会社員であってもフリーランスであっても、これまでにどのような業務経験を積み、どのような実績を残し、どのように切磋琢磨してきたか、が重視されるように思います。
むしろ、30代~40代のエンジニアには、年齢を重ねたからこその幅広い業務経験や知識、会社員時代の人脈、人生経験などの人柄も含めたその人自身が、最大の武器であると言えます。
7. まとめ
考え方ひとつをとってもそれぞれ異なるように、最も効率よくパフォーマンスを上げられる働き方も、人それぞれで異なるように思います。各々に最適な環境で、のびのびと働けるエンジニアが増えれば、そこから新たなイノベーションが生まれたり、個人の働く意欲も湧きやすくなるのではないかと感じています。
会社員エンジニア、フリーランスエンジニアそれぞれに、メリットとデメリットがあります。自分がどのようなエンジニアでありたいか、仕事に何を望むのかによって、働き方を選ぶ基準もおのずと決まってくると思います。
これからのITエンジニアとしてのキャリアを考える上で、本記事の内容を是非参考にしてください。