日本では大学中退をするとそれまで当然のようにあった大学からの就活サポートが無くなります。
また、「大学中退」という肩書は大卒者と比べてマイナスイメージになりがち。大学中退後に自身で積極的に就職活動をすることが困難に感じてしまう人も多いようです。では実際、大学中退者の就職状況はどうなっているのでしょうか。
ここでは大学中退者が抱える不安や疑問、大学中退者が就職するために知っておいてほしい情報について紹介していきたいと思います。
1. 大学中退者の数と理由
大学を中退する人は年間どのくらいいるのか、数と理由について記してみました。
1.1 大学中退者の数はどのくらい?
大学中退者数:57,913人
2020年度には、約5万8千人、全学生の1.95%が大学を中退しています。
これは、およそ50人に1人の割合です。
同じゼミ、あるいは同じクラスのうち1人は大学を中退しているというイメージになります。
参照:新型コロナウイルス感染症の影響を受けた学生への支援状況等に関する調査(令和3年3月末時点)|文部科学省
1.2 なぜ辞めたの?大学中退の理由は?
出典:学生の修学状況(中退者・休学者)に関する調査【令和3年12月末時点】|文部科学省
このグラフは実際に大学を中退した人の情報ですが、「学生生活不適応・修学意欲低下」「経済的困窮」「就職・起業等」「転学等」が上位を占めています。
補足として、「経済的困窮」は新型コロナウイルスの影響を受けて中退理由の上位に上がってきています。
2. 大学中退者の主な進路は4つ
大学中退者の主な進路についてまとめました。
進路 | 概要 | 職歴に含まれるか |
---|---|---|
就職して正社員になる | 就職活動をして正社員の選考に通過し、採用されるなど | 含まれる |
アルバイトを始めてフリーターになる | 条件に合うアルバイト求人に応募し、採用されるなど | 含まれない |
別の大学や専門学校に進学する | 興味関心がある分野について学べる大学・学校に進学するなど | - |
資格の取得に取り組む | 興味関心がある分野や将来的なキャリアに役立つ資格の取得、あるいは公務員試験を受験するなど | - |
大学中退後の進路としておすすめなのは、就職して正社員になることです。
正社員は収入面や待遇面が安定しており、社会的な信用を得られるなどのメリットがあります。
「経済的に自立したい」「社会人としてキャリアを築きたい」という点も満たせます。
ただし、正社員の求人には採用条件に「大学卒業以上」と記載していることが多いです。
中退の場合は不利になりやすく、正社員への就職がなかなか決まらないこともあるでしょう。
収入がない状態で正社員への就職活動を続けるのは、精神的なストレスが大きいです。
焦る気持ちから十分に検討しないまま就職先を決めてしまい、入社後に後悔しかねません。
就職活動が長引きそうな場合は、アルバイトで収入を得ることもおすすめです。
アルバイトでも、仕事に就くことで経済的・精神的なゆとりが生まれます。
可能なら、自分が志望している業界や職種に近い職場でアルバイトを選んでみてください。
より高めたいスキルなどを具体的に考えるきっかけにもなるでしょう。
3. 大学中退から正社員を目指すためのポイント
大学中退から正社員を目指すには、ブランク期間が長くならないよう早めに就活を進めることが重要です。特に人材不足の業界や職種は、正社員として採用される可能性が高いので、積極的に選考に応募しましょう。
人手不足の業界として、IT業界や建設業界が代表的です。
4. 大学中退者におすすめの職種
大学中退者におすすめの職種をいくつかご紹介します。
4.1「ITエンジニア」
未経験からでも就職でき、スキル次第でキャリアアップできる
ITエンジニアは、人材不足から求人が豊富にあります。日本のITエンジニアの人材不足は大きな課題となっており、2030年の時点でIT人材の不足数が最大79万人になる見込みです。
未経験、第二新卒、中退でも働きやすい職種としてSESがあります。SESはシステムエンジニアリングサービスの略称で、正社員のシステムエンジニアとして雇用されて、クライアント先に常駐で技術力を提供する働き方です。ITエンジニアとしてのキャリアを始める選択肢の1つとしておすすめです。
未経験からITエンジニアに転職した人のインタビュー記事があるので、興味のある方は是非ご覧ください。
4.2「公務員」
試験合格で就職でき、安定が魅力
公務員は公務員試験に合格することで就職できます。一般企業のように業績が給与や待遇に影響することがないので、働き方が安定していることが魅力です。キャリアを堅実に設計していきたい人に向いています。
4.3「営業職」
どの業界でも求人数が多く、高卒から求人募集している企業も多い
未経験でも人柄やポテンシャルが評価されやすく、学歴問わずチャレンジしやすい職種です。特別なスキルや資格は不要で、コミュニケーション能力に優れている人に向いています。成果を重視する職種のため、実力次第で昇進・昇給も可能です。
4.4「建築業」
人手不足かつ職種が豊富で、選択の幅がとても広い
建設業界は求人数が多い業界です。主に全体の施工管理を行う「総合工事業者」と、空調や塗装などの設備を行う「専門工事業者」とにわかれ、「専門工事業者」に至っては職種が20種類を越えています。
総務省の調査によると、建設業就業者のうち29歳以下は13%と低く、55歳以上は33.2%と高齢化が進んでいます。手に職を付けられる職業なので将来的に独立するなどの選択肢にもなるでしょう。
参照:労働力調査 年齢階級,産業別雇用者数(2022年1月のデータ)|総務省
5. 大学中退者の不安や疑問を解決
様々な理由で中退してしまった大学。就職に対する不安や疑問を抱える方も多いでしょう。 実際「大学中退」という学歴は、就職する上でデメリットとなるケースもあります。そこで、大学中退者が抱える、就業する上での不安や疑問を解決するために何が必要なのかを解説します。
5.1 大学中退者の最終学歴は高卒?
高校卒業後に大学を中退している場合、「高校卒業」が最終学歴です。ただ履歴書の学歴欄には、「大学中退」と記載することをおすすめします。
一般的に最終学歴に「中退」は含まれないため、直前に卒業した学校である「高校卒業(高卒)」が最終学歴です。ただし、企業によっては大学入試に合格していることを考慮して「中退」の学歴を評価する企業もあります。学歴は給与や昇格に影響する重要な要素のため、履歴書の学歴欄には「大学中退」と記述しましょう。
5.2 大学中退者は就職できない?
大学中退者でも就職は可能です。「大学中退」をどう説明して自己PRにするかを考えましょう。
大学中退者の場合、新卒よりも選択肢が少なく就活の難易度が上がりやすいことは事実です。しかし、大学中退の理由や将来のビジョンが明確にあれば、自己PRになります。「なぜ大学を中退したのか」「就職してどういうキャリアを積みたいか」を考えることが大切です。
5.3 就業未経験の大学中退者は正社員求人を探した方が良いのか?
大学中退者でも、就業未経験の場合は正社員求人を探してみましょう。
「派遣社員」や「契約社員」は、正社員求人よりも働きやすいと感じている方もいるのではないでしょうか。
しかし実際には、業界経験者など即戦力として働ける人材を求めているケースが多いです。未経験で就職を目指せる求人では、仕事内容が簡単でスキルや経験を積みにくい現状があります。
そのため、最初から派遣社員や契約社員を選ぶのではなく、まずは「正社員」を目指すのがおすすめです。企業によっては派遣社員や契約社員から正社員への登用もあるため、正社員への就職に難航している場合は活用してもいいでしょう。
5.4 本音が知りたい!面接官から見た大学中退者とは?
「大学中退」の理由やキャリアプランによって、評価が分かれます。
企業側の面接官には「なぜ大学中退なのですか?」と必ず聞かれます。日本は物事を途中で放棄することに厳しい目を向ける傾向があるため、大学中退者も中退について明確な理由がなければ評価が低くなります。
企業側が知りたいことは、「大学中退と同じ理由で仕事を辞めてしまわないか」「大学中退の理由が業務の支障にならないか」です。中退の理由をはっきりと伝えることで、、キャリアの見通しについて前向きに伝わりプラスの評価を得やすくなります。
5.5 大学中退者の求人応募は新卒採用と中途採用のどちら?
大学を卒業して就職した人は新卒採用枠、大学を中退した人は中途採用枠
大学中退者は、大卒者にはなりません。「中途採用枠・就業未経験者」として就職活動をしましょう。
大学中退者は中途採用者となる為、就職活動では新卒ではなく中途採用枠で応募することになります。 中途採用枠は基本的に「欠員補充」のための枠となるため、大卒者の新卒枠に比べて募集人数が少ないことが多いです。
大学中退者は「中途採用枠で就業未経験者」といった点を認識した上で、就職活動を行うことがポイントです。
5.6 知っておきたい!「ポテンシャル採用」と「非公開求人」とは?
大学中退者で未経験者のみなさんが求人探しで押さえておきたい「ポテンシャル採用」と「非公開求人」。
ポテンシャル採用とは、潜在能力を重視した選考です。
業界経験者でなくとも、素質がありそう、成長しそうといった可能性が伝われば採用される可能性もあります。まだ就業経験はなくとも前向きな姿勢、意欲などが評価される可能性がある、といった経験を問わないチャンスがある求人を指しています。
このポテンシャル採用は未経験者が応募しやすいため、大学中退者にも大いにチャンスがある求人と言えるでしょう。 その他にも「非公開求人」といったネット上などの表には出ていない隠れた求人を一般企業や転職エージェントが持っていることが多くあります。「非公開求人」は転職エージェントなどから直接情報を得ることも可能です。
6. 大学中退者向け就職活動方法
就職活動の方法は様々です。在学中であれば進路相談に乗ってくれる環境がたくさんありますが、中退後の就職活動は基本的に大学のサポートなしで自分で行っていくことになります。大学中退から正社員を目指す場合において大切な就職活動ポイントをご紹介します。
6.1 求人の探し方
現在は、さまざまな方法で正社員募集の求人を探せます。ここでは、大学中退者が遠回りすることなく求人や企業情報を見つけられる方法をご紹介します。
6.1.1 インターネットで探す
ネット掲載の求人は正社員募集以外に派遣やバイト等の非正規雇用も含まれていることや、経験者のみしか採用しない求人など、自分が求めている求人が見つかりにくいことがあります。
大学中退者が求人サイトを利用する場合は「中途採用・未経験」という枠で絞ると良いでしょう。中途採用枠なので転職サイトも利用できます。
6.1.2 ハローワークを利用する
ハローワークでは求職者に雇用の機会を与えるため、一般的な求人情報では極力求人の条件を緩くするように働きかけられることが多いようです。
求人募集要項に書いていなくても条件に大卒者や新卒者向けとされている可能性もありますので、窓口の担当者に確認をしながら応募してみると良いでしょう。
6.1.3 転職エージェントを利用する
大学中退者にとって、未経験者へのサポートがある転職エージェントに登録して利用することは効率的に就職活動を行えます。なぜなら、登録者数の多い就職支援会社は求職者(仕事を探している人)と企業をマッチングさせるためのサービスで、一人での就職活動に不安がある大学中退者(中途採用者)の就職サポートやアドバイスなどを行なってくれるからです。
具体的には履歴書などの応募書類の添削や、面接対策をしてくれることが挙げられます。また、就職支援会社では仮に「大学中退者は不可」としている一般企業や民間企業があったとしても、利用する人(大学中退の求職者)がそれに応募するような事態には通常ならないため効率よく就職活動が出来ます。
未経験者やフリーター、第二新卒者へのサービスがある就職支援会社は無料で利用できるので迷わず登録、利用することをおすすめします。
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6.1.4 無料の実践型就職支援講座(インターンシップ)を受講する
実践型の勉強を行いながら技術を身に付け、就職支援をしてもらうことがすべて無料で出来るというサービスもあります。
初心者でも受講できたり資格が取れるなどの登録システムがあり就職サポートも充実していますので、大学中退者のように就職できるか心配な方にはおすすめの求人の探し方と言えるでしょう。
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7. 大学中退者向けおすすめ資格
正社員就職を目指す大学中退者の方におすすめの資格をご紹介します。
職業によっては資格が必須なケースもあるので、目指すキャリアに合わせて選択しましょう。資格を取得しても確実に就職できる保証にはならないものの、理想とする将来の姿に近づき、選考を有利に進められます。それでは見ていきましょう。
7.1 ITエンジニア向け資格
ITエンジニア向けの資格には様々な種類がありますが、基本的な知識を証明できる資格として「基本情報技術者」の資格がおすすめです。
ITエンジニアに就職するためにこの資格は必須ではありません。実際、常駐のテストエンジニアなどは未経験でも採用されるケースがあり、基本情報技術者の知識を問われるかはポジションや年齢にもよります。
しかし、基本的な技術力やITエンジニアとしての意欲をアピールするのに資格は有効な手段です。能力を重視されやすいITエンジニアを目指すなら、取得を目指してみてはいかがでしょうか。
基本情報技術者の資格については以下の記事でまとめています。参考にしてみてください。
7.2 公務員資格
公務員の資格は公務員試験という科目数が多く難関な試験をクリアしなければなりませんが、学歴に関係なく試験を受けられるので大学中退者にも門戸が開かれています。公務員となるには必須の資格です。
7.3 宅地建物取引士
宅地建物取引士は、不動産の売買や賃貸の仲介などには不可欠な資格です。
学歴の制限なく取得が可能で、不動産売買賃貸の他にも銀行関係、各種小売、飲食業のテナント開発部門などでも評価されることがあり、就職活動や転職にも有利な資格です。意外と間口が広いため求人募集が多く、そのため就職率も高いのです。
7.4 簿記検定
就職活動で様々な企業から評価されることが多い簿記検定は資格習得の学校TACのランキング情報によると総合人気資格NO.1です。また、日経WOMANの人気資格情報の「女性だけ・仕事に役立つ」ということを条件に調査したランキングでも1位となっています。
売り上げや経費について意識して働いている人は、仕事を効率的に行えると考えられることから、経理職に関わらず、全職種で評価されることが多いと考えられるでしょう。
7.5 通関士
通関書類の作成や通関手続きの代行を行う貿易に関する国家資格です。
Webなどの進歩でグローバル化が進み、世界間の業務取引がスタンダード化している国際的社会で、貿易を支える通関士の仕事は、活躍に期待がかかる職業の一つだと言えるでしょう。通関業者以外にも、海外取引を行なう商社や各種メーカーの輸出入部門など、募集している求人も様々です。
この他にも、仕事の幅を広げるために社会人がチャレンジしている勉強に取り組んでみるのもおすすめです。
▶ 社会人に人気の勉強ランキング!おすすめの勉強方法やタイミングも紹介【男女416人アンケート調査】|RS MEDIA
8. 大学中退者向け就職活動のポイント
就職活動の方法は様々です。
在学中であれば進路相談に乗ってくれる環境がたくさんありますが、中退後の就職活動は基本的に大学のサポートなしで自分で行っていくことになります。大学中退から正社員を目指す場合において大切な就職活動のポイントをご紹介します。
8.1 面接の受け方
一般企業の面接ではほとんどの場合「大学中退」の理由について聞かれることになるでしょう。
ある程度予想される質問について面接の場では自分の言葉で伝えらえるように、意見をしっかりとまとめておくことをおすすめします。
【予想される質問】
• 志望動機(企業情報の収集)
• 大学の中退理由
• 中退後取り組んだこと
• 入社後にやってみたいこと
• 長所と短所
また、マナーを守ることはもちろん、身だしなみに清潔感があることなど見た目の印象も大切です。そして面接の基本は「誠実」な印象を与えることです。「はきはきとしゃべる」「下を向かない」「姿勢を正す」「採用担当者の話は目を見て聞く」「ネガティブな発言は控える」という点も心得ておきましょう。
8.2 内定をもらった後の手順
内定をもらった後はいよいよ新入社員としての準備です。社会人としてのスタートを気持ちよく迎えるために事前にしっかりと準備を整えましょう。入社前に必要になる基本的な事について挙げますので参考にしてみてください。
• 必要書類を揃えて提出する
• 健康診断を受ける
• 服装、身だしなみを整える
• 生活リズムを整える
• 企業情報、業界についての勉強をしておく
9. まとめ
様々な理由で中退してしまった大学。少なくとも言えるのは、「中退すること」が「成功しない」ということには直結しないということです。
まずは今の自分の現状を受け入れ、目先だけではなく5年後、10年後の事を考えながらしっかりとキャリアを築いくための手順を踏んでいくことが大切なのではないでしょうか。
この情報があなたの次のステップへの手助けになる為にも本記事の内容をぜひ参考にしてみてください。
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