「フリーランスエンジニアとして独立したいけれど、今のスキルと経験で独立して成功できるのか不安…」という方に向けて、独立に必要なスキルや、タイミングと年齢、成功するためのポイントをご紹介します。エンジニアとして独立を検討されている方はぜひご一読ください。
1. エンジニアの独立とは
エンジニアとして経験を積み、技術力も身に付き、エンジニアとして自信がついてくると、収入アップや自由な働き方を目指して独立することを考える人も少なくないでしょう。
エンジニアが独立する場合、その方法は大きく2つに分けられます。
1つ目は、フリーランスとして仕事を請け負う方法です。2つ目は、会社を設立し起業する方法です。
1.1 おすすめはフリーランスエンジニア
働き方が多様化しつつある中で、フリーランスとして独立することも一般化しつつあります。
フリーランスのメリットは、サラリーマンに比べて、フレキシブルな働き方ができる点。好きな時間や場所で働くことができたり、働く際の条件も自ら決められます。
また、フリーランスエンジニアとして独立することをおすすめするポイントとして、会社を設立して起業することに比べて、手続きや開業費と言った点で、負担が少ないことが挙げられます。
2. 独立するエンジニアが多い理由
なぜ近年、フリーランスとして独立するエンジニアが増えているのでしょうか?
主な理由と動機をエンジニアを取り巻く市場の実態や需要、エンジニアの抱えている不満や要望と合わせて、5つのポイントに分けて、解説していきます。
2.1 エンジニア不足で仕事が決まりやすい
エンジニア不足と言われ、将来的にも深刻な人手不足が懸念されているIT業界。
人材不足と言われる理由のひとつに日本の少子高齢化社会が挙げられます。社会全体における働き手の絶対数が減っているため、必然的にエンジニアの数も減っています。その一方で、社会や企業の急速なIT化が進み、エンジニアの需要は高まっているため、市場では深刻なエンジニア不足に陥っています。そのため、技術を持ったエンジニアは売り手市場であり、フリーランスとして独立しても、仕事が充分にあるため独立を考える人が多いのです。
2.2 収入、給与に対する不満と期待
フリーランスとして独立を検討する際、誰もが一度は考えるポイントが給与や待遇面ではないでしょうか。フリーランスのエンジニアの中には、下記に挙げるポイントをきっかけに独立に踏み切っている方もいます。
・雇用されている企業の待遇に満足していない
・実力次第で収入を上げられる
・会社員の時と同じスキルの仕事をするのなら、独立して収入を増やしたい
・独立フリーランスであれば、自分から金回りの良い業界に飛び込んでいける
2.3 自分がやりたい案件を選べる
企業に属するエンジニアは、与えられた案件をこなしていかなければならないことが多いのではないでしょうか。その場合、一定の技術を身に付けてしまうと物足りなさを感じたり、やりがいを強く求めてしまうことでしょう。
その点、フリーランスの場合は、自分で案件を選び、自分の裁量で仕事ができるようになるため、自分の能力を活かした案件や、自身が成長できる案件を選ぶことも可能です。
また「一般社団法人プロフェッショナル&パラレルキャリア・フリーランス協会」の調査によると、フリーランスという働き方に対する満足度が高いグループでは、フリーランスになった理由が「自分の裁量で仕事をするため」などのポジティブなケースが多くみられ、自ら積極的にフリーランスを選んだかどうかが、その後の満足度に影響を与えていると推測されています。
出典:フリーランス白書2020
2.4 経験が浅くても活躍できる
フリーランスとして独立するというと、「高いスキルが必要なのではないか」「今のスキルで案件を獲得できるのか」と不安に思っている人も少なくないと思います。
しかし、前述の通りIT業界の現状はエンジニア不足です。必ずしも高いスキルが求められるわけではなく、フリーランスのエンジニアが活躍できる場は多くあります。
その理由は下記の2点です。
◆ フリーランスの採用基準は社員より低い
社員として採用されるためには、スキルだけでなく、将来成長が見込めるかどうか、企業文化に合っているかなど、様々な面から審査が行われ採用の可否が決定されます。一方で企業にとってフリーランスを受け入れることは、自社で補えないリソースを一時的に必要な期間のみ調達できれば良いため、採用基準は必然的に低くなるのです。
◆ 下流案件も多く存在している
フリーランスというと高いスキルを求められるイメージが強いかもしれませんが、人によっては、既存のソースコードを改修する程度のスキルレベルでも、案件獲得に成功しています。
フリーランスと言っても、スペシャリストである必要はなく、登録型派遣と同様、「働き方のひとつ」として捉えて良いのではないでしょうか。
2.5 営業しなくても仕事が見つかる
案件獲得のためには「営業が必要」「人脈が大切」と身構えてしまう人も少なくないでしょう。そのような場合、エージェントを利用すれば案件獲得は難しくありません。
たとえ実務経験が1年程度であっても、安定的に案件を獲得することは可能です。他にもエージェントを利用するメリットを確認しておきましょう。
・面接の日程調整など企業との調整を代行してくれるので、効率良く仕事探しができる
・大手企業案件など、非公開求人を含む求人情報が集まっているので、選択肢が増える
・スキルやキャリアを客観的に棚卸ししながら、今後のキャリアプランを相談できる
・応募書類や面接の対策を行ってくれる
・報酬金額など、条件交渉を代行してくれるため、トラブル回避につながる
3. エンジニアが独立するタイミングと年齢は?
実際にフリーランスとして活躍されている方々は、どのようなタイミングで独立しているのでしょうか。エンジニアとして独立する場合、企業である程度の経験を積んでからの独立がその後のキャリアも安定するのでおすすめです。
次項では、エンジニアが独立するのに適したタイミングと年齢・就業年数を解説していきます。
3.1 独立するタイミング
独立することを決意したら、下記のタイミングを意識して会社員からフリーランスへ転身しましょう。
◆ 現職で区切りの良いタイミング
独立後、案件獲得の際に人脈はとても重要です。現職の同僚や周囲に迷惑を掛けて評価を下げてしまうと、独立後の案件獲得にも影響する可能性があります。これまで築いてきた人間関係を良好に維持できるよう、現職で区切りの良いタイミングでの独立をおすすめします。
◆ 独立後の案件獲得の目途が立ったタイミング
フリーランスで心配なのは、やはり収入面です。独立直後は何かと不安要素が多いもの。収入の目途が立っていれば、不安感を軽減することができるでしょう。
そのために、企業に所属している間に、案件獲得に向けて動き出しましょう。現職の人脈を使って営業をすすめたり、エージェントに登録・相談しておくなど、事前に収入の目途を立てておくことが大切です。
3.2 フリーランスになる年齢
出典:平成27年度小規模事業者等の事業活動に関する調査に係る委託事業報告書|経済産業省
経済産業省の調査によると、フリーランスとして独立した年齢は、30代が最も多くなっています。20代以下でも決して少なくありません。(※エンジニア以外の職種も含む)
フリーランスエンジニアにとって重要なのは、年齢よりも即戦力です。クライアント企業は「技術を教えなくてもひとりで仕事ができる人材」を求めています。
年齢を問わず、「ひとりで仕事ができること」が独立の条件とも言えるでしょう。
また「若くて勢いのある人材」を求める企業も多く存在します。特にスタートアップ企業では、「勢い」を大切にしているところも多いため、若いエンジニアが求められる傾向もあります。
3.3 フリーランスになるまでの就業年数
出典:平成27年度小規模事業者等の事業活動に関する調査に係る委託事業報告書|経済産業省
次に独立してフリーランスになるまでの就業年数について確認していきましょう。
経済産業省の調査によると、フリーランスになる以前に5年以上就業していた方が全体の約8割に上っています。
前述の通りクライアント企業は、フリーランスエンジニアに対して「技術を教えなくてもひとりで仕事ができること」を求めます。この条件を満たすためには、最低でも実務経験が1年以上必要と言えるでしょう。会社員として働いている期間に、ひとりで仕事ができる力を身に付けておくことが重要です。
なお、実務未経験からの独立は、クライアント企業から技術を教えてもらう必要があるため、次のようなリスクが高くなると言えるでしょう。
・対等な交渉ができず、報酬が相場よりも低くなる
・仕事が獲得できない
4. フリーランスエンジニアにはスキルが必要?
フリーランスエンジニアが収入を得るためには、技術スキルと合わせて必要となるスキルがあります。具体的にはどのようなスキルが必要となるのでしょうか。ひとつずつ確認していきましょう。
4.1 フリーランスエンジニアに必要なスキル
フリーランスエンジニアに必要となるスキルを、大きく3つに分けてご案内します。
1. エンジニアとしての技術力
当然のことですが、エンジニアとしてのプログラミングやITに関する知識と技術は必須です。高い技術力を身に付けていれば、安定して案件を獲得できます。
また、技術の移り変わりが早いIT業界では、案件を受注しながら市場の需要に合った新しいスキルを学習し続けることが必要です。
2. コミュニケーション能力
コミュニケーション能力は技術力と同じくらい大切。案件獲得時にも営業や条件交渉と言った場面で、必要になります。また、フリーランスエンジニアであっても、チームでメンバーと協力しながら開発していくことに変わりはありません。メンバーと円滑なコミュニケーションが取れるよう、コミュニケーション能力を磨くことを意識しておきましょう。
周囲と良好な関係を築くことで、その後自分にとって「良い」人脈を広げることにもつながります。
3. 自己管理能力
フリーランスの場合、健康管理も重要な仕事のひとつです。会社員と異なり、体調を崩して仕事を休めば収入にも影響します。
自分の裁量でスケジュールが立てられ、好きなように働けるからと言って、スケジュールを詰め込み過ぎず体に無理のない規則正しい生活が送れるようスケジュールを管理する能力も大切です。
また、会社員時代と異なり、経費や税務処理など経理的な事務作業についても自身で行う必要があります。
4.2 すべてのスキルを持ち合わせてなくても良い
前項ではフリーランスエンジニアに必要なスキルを解説しましたが、必ずしもすべてのスキルを持ち合わせていなければならない、ということではありません。
例えば、コミュニケーション能力に自信がなく、案件獲得のための営業や人脈を広げることが苦手であれば、エージェントを利用して自身の苦手分野をカバーすることができます。
また、経費や税務処理など事務作業についても、会計ソフトなどのツールやアプリを利用したり、税理士を雇うなどして効率良く処理する方法があることも覚えておきましょう。
5. フリーランスエンジニアの年収
フリーランスと会社員の年収はそれぞれどのくらいなのか、本サイトProengineer内の求人情報から、フリーランスエンジニアと会社員エンジニアの年収を比較してみました。
◆ 会社員エンジニアの年収
会社員エンジニアの年収傾向を把握する目的で、本サイトに掲載されていた正社員求人約600件の年収分布を独自に算出しました。 結果は次のグラフのとおりです。
出典: 2018年5月 ※プロエンジニア自社保有案件の一部より算出
最も多い年収層は、平均550万円となりました。
また、全体の約半数が平均年収450万までという結果になっています。
◆ フリーランスエンジニアの年収
次に、フリーランスエンジニアの年収傾向を把握する目的で、本サイトに掲載されていたフリーランス求人約600件の年収分布を独自に算出しました。 結果は次のグラフのとおりです。
出典: 2018年5月 ※プロエンジニア自社保有案件の一部より算出
最も多い年収層は660万、次いで780万が多く、フリーランスエンジニアは平均年収660~780万あたりが多いということがわかります。
上記の結果の通り、フリーランスと会社員を比較すると、フリーランスの方が平均年収が高くなる傾向が見られます。
また、フリーランスの場合、年収1000万円を超える案件が全体の10%を占めていることがわかります。高いスキルが求められる案件は、それだけ単価も高くなり、会社員と比べて、スキルと年収が比例しやすい働き方と言えるでしょう。
6. 独立に失敗する人と成功する人の違いとは
独立に失敗する人と成功する人の違いはどこにあるのでしょうか。
次項では、失敗しがちな落とし穴と、独立に成功する人に共通する点をご紹介していきます。
6.1 「独立したい」という思いはあるか
独立に成功する人に共通しているのは、「独立したい」「このビジネスをやりたい」という強い意志と、ポジティブな気持ちで、独立に踏み切っているということです。
逆に「どうしても独立したい」という気持ちがない下記のような動機で独立をすると、
独立した後で後悔につながることが多々ありますので、注意が必要です。
【失敗例】
・今の環境(給与や待遇)に不満があり、ただ辞めたいという理由で独立する
・自分の中に特別な目的は無かったが、信頼している先輩に誘われて独立する
・不満のある現状から“逃げるため”の独立
6.2 技術屋の物差しだけでビジネスをしていませんか?
独立して、成功のカギを握るためには、技術者としての物差しだけでビジネスをするのではなく、ユーザーや顧客ありきのマーケティングや、経営にも目を向けてビジネスを展開していくことが重要です。
技術者が陥りがちな失敗例に、自身の持っているスキルを活かして、誰も使わない「技術的に優れたプロダクト」を開発してしまうことが挙げられます。
ユーザーや顧客から評価されるプロダクトを作らなければ、自己満足で終わってしまいます。そうならないためにも、マーケティングや経営の視点を持つように心がけましょう。
6.3 自分のキャパシティを超えない
フリーランスとして成功するための大事なポイントのひとつに、自己管理が挙げられます。会社員と違い、有給や休職手当などないフリーランスは、体調を崩して仕事を休んでしまえば、直接収入にも影響してきます。
会社を辞めて独立すると、ついつい気合が入り過ぎて仕事を詰め込んでしまいがちですが、働き過ぎて体を壊してしまっては本末転倒です。休むことも仕事のひとつと捉え、体に無理のないスケジュールで自己管理を行い、安定した収入につなげることが大切です。
7. エンジニアが独立するための準備と手順
エンジニアが会社を退職してフリーランスとして独立するためには、どのような準備と手続きが必要になるのでしょうか。手順を追って確認していきましょう。
7.1 会社員のうちにやっておくべきこと
フリーランスは、会社員と違い、収入が不安定になることから、社会的信用面で不利になってしまうことがあります。そのため、会社員であるうちにやっておいた方が良いことがあります。以下に独立前にやっておきたいことをご紹介します。
・クレジットカードの作成
・不動産契約や車のローンを組んでおく
独立後に事務所を借りたい場合や、車が必要となる場合は、退職前に契約を済ませておきましょう。
✔ 今の仕事先に辞めると言いづらい場合は、退職代行サービスを使うのがおすすめです。
7.2 開業届や保険などの事務手続き
退職をしたら、独立に向けてすぐに済ませておきたい手続きをご紹介します。
・税務署への開業届け・青色申告書提出
・役所への保険・年金変更届け
・印鑑作成や通帳作成など
開業届は開業日から一ヶ月以内に提出する必要があります。提出が遅れたり、出し忘れても、罰則はありませんが、屋号で銀行口座を開設するときなど、開業届の写しが必要となる場合がありますので、早めに出しておくようにしましょう。
また、フリーランスの場合、確定申告を自分で行う必要があります。確定申告には、青色申告と白色申告の2種類があり、事前に青色申告承認申請書を税務署に提出しておくことで、65万円または10万円の特別控除を受けられ、節税につながるため、申請しておくことをおすすめします。
7.3 営業に関する準備
独立の準備ができたら、案件獲得のための準備をしましょう。
案件を獲得する方法は、個人で営業するケース、過去の人脈を頼って仕事を受注するケース、エージェントを活用するケースなど、様々だと思いますが、間口が広いに越したことはありません。どのケースにも対応できるように準備を整えておきましょう。
・エージェントへの登録(複数登録しておくことをおすすめします。3社程度)
・交流会や勉強会への参加、コミュニティーの利用
・スキルシートの作成
8. 独立に迷ったら副業もおすすめ
ここまで独立のタイミングや必要スキルなど解説してきましたが、独立に迷いがある人、踏み切れない人は、まずは会社員でも始められる副業からやってみてはいかがでしょうか。
副業からフリーランスを目指すメリットも下記の通り存在します。まずはご自身の感覚で、フリーランスが合うか合わないかを確認してみませんか。
【副業からフリーランスを目指すメリット】
・いきなり独立するのに比べ、失敗のリスクを避けることが期待出来る
・本業の安定した収入を維持できるので、メンタルが安定して副業に取り組める
・確定申告や経理作業も必要となるので独立前の予行演習にもなる
・本業プラスαの収入になるので、副業で貯めたお金を資本金に充てる事ができる
・副業で得た知識や人脈を活かして、独立した際に仕事を獲得することもできる
・副業で身につけたスキルを本業にも活かせる
9. まとめ
エンジニアは比較的独立しやすい職種であり、働き方が多様化している昨今、フリーランスという働き方も珍しいものではなくなりました。
近年のIT業界のエンジニア不足で、売り手市場ということもあり、技術力を持ち合わせていれば、収入が途絶える心配も少ないでしょう。独立に迷っているのであれば、まずはエージェントに登録するなどして、ご自身のキャリアの棚卸、そして市場での需要をチェックしてみるところから始めてみてはいかがでしょうか。